「突き飛ばされたり、手を上げられる事もあります。あざになった事も……」

 35歳の彩子さんは、夫のDVに悩まされてカウンセラーの下を訪問した。手を上げられたときの写真は証拠としてすべて残しているという。しかし、その後に夫をヒアリングすると、全く違う事実が明らかになり――。

 年間に20万件弱も発生している「離婚」。夫婦の衝突や、それぞれの抱える葛藤の行きつく果てといえるが、その前段階でお互いのことを理解し合えれば「壊れかけた夫婦」は再生できる。

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 長年、多くの夫婦と向き合ってきたカウンセラー・山脇由貴子氏による新著『夫婦はなぜ壊れるのか カウンセリングの現場で見た絶望と変化』から、一部抜粋してお届けする。なお、プライバシーへの配慮から本文中の名前は全て仮名。(全2回の1回目/続きを読む)

DVに悩まされていると主張する妻だが…… 画像はイメージ ©yamasan/イメージマート

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 彩子さん(35歳)は夫のDVについて悩んでおり、夫婦で相談に来ました。

「怒鳴られる事はしょっちゅうですし、突き飛ばされたり、手を上げられる事もあります。あざになった事もあるので、今後の為に全て写真に残しています」

 夫からの暴力による怪我の写真や、怒鳴られている時の音声を残しているという妻は実は少なくありません。いざ離婚を考えた時の為と皆さん言います。

「暴力を振るっているのは本当ですか?」

 夫の悟さん(38歳)に私は尋ねました。

「私は、暴力を振るっているつもりは……」

「こうやって夫は認めないんです」

 彩子さんが強い口調で言いました。

 2人には子どもはいないとの事。彩子さんは専業主婦ですが、家事が得意ではないため、家事全般を悟さんが積極的にやっていて、彩子さんもその点は不満はないそうです。

「でも、夫は何年か前にキャバクラに通っていた事があって。今でも時々怪しい行動があるので『携帯見せて』って言うと、必死に抵抗して。そういう時に暴力を振るうんです」

「僕は浮気なんて……」

 悟さんがそう言うと彩子さんは、「信じられる訳ないでしょ。前科があるんだから」と遮ります。夫婦が揃っていると話しにくい事もあります。まず私は悟さんの言い分を聞く事にしました。