「彼女は大事に育てられた人なので、僕も大事にしてあげなきゃ、と。だから家事も出来るだけやって来ましたし、彼女がカッとなった時は、僕が我慢すればいいんだ、と思って来ました」
38歳の悟さんは、妻・彩子さん(35)から受けているDVについてこう話す。裕福な家庭で育ち、甘やかされて育った彩子さんは感情のコントロールが弱く、時に衝動的になってしまう傾向があるという。そんな彩子さんは、自身の行動についてどう思っているのか。
年間に20万件弱も発生している「離婚」。夫婦の衝突や、それぞれの抱える葛藤の行きつく果てといえるが、その前段階でお互いのことを理解し合えれば「壊れかけた夫婦」は再生できる。長年、多くの夫婦と向き合ってきたカウンセラー・山脇由貴子氏による新著『夫婦はなぜ壊れるのか カウンセリングの現場で見た絶望と変化』から、一部抜粋してお届けする。なお、プライバシーへの配慮から本文中の名前は全て仮名。(全2回の2回目/前回を読む)
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彩子さんの方は、悟さんの言う通り、裕福な家庭で育ち、両親と5歳上の兄からも可愛がられて育ったそうです。
「親から𠮟られた記憶はありません。家にはお手伝いさんがいて、その人にも可愛がられました。あと、祖父母にもすごく可愛がられました」
欲しい物はなんでも買ってもらえたし、自分でも甘やかされて育った、と思うそうです。大学卒業後は父親の知り合いの会社に勤めたけれど、実家暮らしで、買い物は父親のカード。悟さんは普通のサラリーマンなので、両親は最初、結婚に反対したけれど、悟さんの誠実な人柄が認められ、賛成してくれたそうです。
心理テストの結果、大切に守られて育ち、自分に自信があり自己評価が高いことから、否定されたり、ないがしろにされる事を極端に嫌う傾向があり、人からの攻撃には過敏。ただ、感情のコントロールがやや弱く、物事が思い通りに行かない時に衝動的になる傾向も認められました。
夫に対する愛情はありますが、現在は、不信感を抱いています。ただ、もっと優しくして欲しい、甘やかして欲しい、という思いも抱いているのが分かりました。
夫婦同席のカウンセリングでそれぞれの結果をお伝えしました。重要なのは、どちらが暴力を振るったかをはっきりさせる事ではなく、あくまで夫婦関係の改善法を見つけ出すことです。
「ご主人は彩子さんをとても大切に思っていますし、仲良く、穏やかに過ごしたいと思っています。テスト結果からは、浮気をしているとは思えませんでした」
