「夫から女性へのメールがすごく性的な、いやらしい文面で」

 カウンセラーを訪問した40代の女性は、こう明かす。夫のようすがおかしいといぶかしみ、スマホを盗み見たところ、マッチングアプリを使っているのが判明。女性たちとのやり取りの中には、ホテルに誘うメッセージもあったという。

 その後、夫婦でカウンセリングに訪れて夫を問いただすと、「本当に申し訳ないと思っています。ただ、やり取りしていただけで、浮気をした訳では……」と弁明し始め、マッチングアプリを始めた理由を語り始めた――。

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 年間に20万件弱も発生している「離婚」。夫婦の衝突や、それぞれの抱える葛藤の行きつく果てといえるが、その前段階でお互いのことを理解し合えれば「壊れかけた夫婦」は再生できる。

 長年、多くの夫婦と向き合ってきたカウンセラー・山脇由貴子氏による新著『夫婦はなぜ壊れるのか カウンセリングの現場で見た絶望と変化』から、一部抜粋してお届けする。なお、プライバシーへの配慮から本文中の名前は全て仮名。(全2回の2回目/前回を読む)

「浮気をしたわけではない」と言い張る夫が、マッチングアプリを使い始めた理由とは 画像はイメージ ©maruco/イメージマート

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「マッチングアプリを始めたきっかけはなんだったんですか?」

 私はストレートに尋ねました。勇一さんは、考えながら答えました。

「一番は、コロナだったと思います。私は完全テレワークになり、子どもたちも休校になったんですけど、妻は半分出勤、半分テレワークでした。家事育児をやるのは私が主になって、それは仕方がないと思ってました。でも、とにかくやる事が多くて……。仕事をしない訳にもいかないし、リモート会議もあったので、手が回らなくて……」

 そうはいっても、食事の準備だけはしなくてはならないので、朝、昼食まで用意して子どもたちに食べるように言っておく。でも放っておくとお菓子を食べて済ませたり、食べても食器を片付けていなかったりする。そんな子どもの世話と仕事で他の家事に手が回らなかったと言います。

「そうすると帰ってきた妻に怒られるんです。『なんで1日中家にいたのに洗濯してないの!』『なんでこんなに部屋が汚いの!』って。仕事がある事は妻も分かっているんですけど、出勤の日は妻も疲れて帰って来るので……」