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「先に手を出すのは妻の方なんです」
後日、悟さんだけに来てもらい、話を聞きました。
「暴力は、本当なんですか?」
改めて聞きます。すると、悟さんが、「あの……。僕の話は妻には……」と尋ねて来ました。
「大丈夫ですよ。悟さんからお聞きした話をそのまま彩子さんに話す事はありません。聞いてもらう必要があると思った時には、悟さんに確認してからお伝えします」と私が答えると、はあと安心したようなため息をつきました。
「先に手を出すのは妻の方なんです。私は止めようとして手首をつかんだり、肩を押さえたりはしますが、私から手を上げる事はありません」
「彩子さんは怪我をしたこともあるっておっしゃってましたが」
私がそう言うと、悟さんは首を横に振りながら言います。
「手首をつかんで、あざになった事は確かにありましたけど、それだけです」
悟さんは続けます。
「妻は僕の浮気をずっと疑っていて、携帯を見せろと言って取り上げようとするので、妻を押さえようとするんです。もう手が付けられなくなるので。付き合いで何度かキャバクラに行った事はありますけど、浮気なんてしていません。今も後ろめたい事がある訳ではないですが、何で怒り出すか分からないので、携帯を見せるのは……」
悟さんの話と彩子さんの話は大きく違っていますが、夫婦で話が一致しないことはよくあります。カウンセリングはどちらの言い分が正しいかを判断する場所ではありません。それぞれの感じ方を聞き、解決策を探していくことが重要なのです。
