「父の口座の株やETFを勝手に売却され、ある銘柄を高値で買わされていた。資産額が300万円ほど目減りしていたため、私に『何か変だよ』と連絡してきた。警察は『管内での被害は初めて』と言っていました」
そう語るのは、80代の父親が被害に遭ったA氏だ。
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被害総額は7100億円
証券口座が乗っ取られ、不正に株が売買される被害が相次いでいる問題。警視庁は11月28日、中国籍の経営者・林欣海(38)と江榕(42)の2人を、金融商品取引法違反(相場操縦)と不正アクセス禁止法違反容疑で逮捕した。
「3月17日、2人は何者かと共謀し、他人名義の10口座に不正にアクセス。この10口座と林容疑者が経営するL&H社名義の口座を使い、東証スタンダード上場のコンサル会社の株を大量に売買。不正に株価を吊り上げて売り抜け、約860万円の利益を得たとされる」(警視庁担当記者)
金融庁によると1月〜10月の証券口座乗っ取り被害は9300件以上、被害額は7100億円超だ。サイバー犯罪に詳しいカウリスの島津敦好CEOが語る。
「証券会社のフィッシングサイトが最初に確認されたのが昨年11月。翌月、複数の証券口座で不正ログインが報告され、今年3月、口座乗っ取りによる不正売買が急増しました」
狙われたのは時価総額が50億円未満で、株価を吊り上げやすい企業だ。4月の不正取引の売買額は2900億円超。10月は190億円に減るも、国内での逮捕は今回の2人が初めて。


