中国系の組織とみられる不正グループ
一連の不正には、複数の犯罪グループが関与しているとされる。特に大企業や学術機関が連携する日本サイバー犯罪対策センターが「BP1」と呼び、注目しているグループがある。
「一連の不正もこのグループや派生した集団が関わっている可能性が高い」(同前)
彼らは中国系の組織と見られており、
「新種の詐欺メールの多くに中国語のツールが使われていた」(社会部記者)
彼らが実行犯を募るために使用するのが、秘匿性が高いメッセージアプリのテレグラムだ。この中に、「株価操縦」「株売買」などのトピックを扱う掲示板があるという。そこで、闇バイトの要領で、口座乗っ取りを行う実行役を勧誘するのだ。
「今回、逮捕された中国籍の2人は、こうした掲示板の勧誘に乗った可能性があると推測しています」(同前)
「11歳で来日→駒澤大学を卒業」「大田区などで飲食店を経営」
林と江は乗っ取りを行う際、日本国内の林の法人口座を使ったため、すぐ足がついた。後先を考えず、儲け話に飛びついた格好だ。
林は中国の福建省出身で、11歳で来日。駒澤大学を卒業後、12年に時計の輸出販売の会社を立ち上げた。
「17年にはタバコの販売会社も創業。福建省のソフトウェア会社で監査役についているが、赤字の時期もしばしばあった」(林の知人)
江も13年、都内で飲食店を経営する会社を設立。
「大田区などで飲食店を開いていた。ただ経営は苦しかったようで、店舗は閉店。飲食店で使っていた家具を、中古サイトに出品せざるを得ないほどだった」(同前)
林と江は以前、同じ住所に住んでいたこともある仲。一体、2人はどんな関係なのか。林の父を直撃した。
――2人の関係は?
「いとこ同士」
――会社の経営状況は。
「タバコ屋は今はない。飲食店は知らない」
――お金に困っていたか。
「聞いたことはない」
――逮捕された時は?
「警察が家に来て逮捕された時は少し緊張した。驚いたりはしなかった」
冒頭のA氏が嘆息する。
「PCを調べても、ウイルスも見つからず、どうして被害に遭ったかわからない。父は非常にショックをうけています……」
事件前、林の口座には、何者かによって数千万円が振り込まれている。この振込主が誰なのか。今後の捜査の焦点はそこになる。
