数々の「先進的取り組み」で同人活動を支えてきた

 現在は小ロット(1部~)かつ多品種(2万種類以上)の印刷が強みだというポプルスの歴史を振り返ると、数多くの先進的な取り組みを行ってきたことが分かる。

 例えば、中野から板橋に移った1974年には料金表を採用して印刷費用の明朗化を実現。ページ数と部数、値段だけの簡単な価格表だったそうだが、料金表のある印刷会社は当時ほとんどなかったと中澤氏は話す。

最小で1部から、かつ多彩な印刷に対応している

 1993年にはオンデマンド印刷を導入。その後もいち早くデジタル化を進め、2000年にはオンライン入稿にも対応した。いずれも現在の印刷業界では標準的な設備とシステムだが、小規模の印刷会社として異例の早さで導入している。

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 漫画などの印刷以外では、CDプレス業務を1998年に開始。以降、同人活動のブームを先取りするように、印刷サービスを超えて創作活動を幅広く支援する事業を拡充してきた。

「我々に先見の明があるというより、お客さんに導かれて鍛えられてきた会社なんです。要望にできるだけ応えようとしてきた結果、各種グッズ制作やアナログゲーム作成に加え、近年は3Dフィギュアを作成するサービスも高い人気があります」

近年は3Dプリンターを導入した
3Dフィギュアは近年のヒット商品だ

 もちろん、全てが成功したわけではない。当時では先進的すぎて受容されなかった取り組みもある。その一つが、1978年に福生駅前にオープンした漫画同人誌などの専門書店「風民族」だ。

「何カ月待っても、全然お客さんが来ませんでしたね。『とらのあな』さんなど、大手同人ショップが誕生する何年も前の話ですから。ただ、後に『アニメイト』の立ち上げにも関わる方が来店してくださったこともあり、いまに至る漫画・アニメブームにもちょっとは役立っているかもしれません」