老舗印刷会社が分析する、コミケ作品の「トレンド」傾向とは?
ポプルスの従業員は、現在50名以上。大学サークルの活動や趣味の同人活動を機に同社を知って入社する人も多いようだ。
コミケ前のクリスマス前後などは1年で最大の繁忙期で、従業員の大半が課を跨いで印刷・製本・梱包などに関わる。同社が顧客向けに用意している「マイページ」機能の登録者は個人・団体を合わせて13万件を数え、20代前後の若者も多い一方、30年以上の付き合いのあるベテラン利用者も2割ほど存在している。文字通り、コミケを含む同人活動を支えてきたわけだ。
コミケでは搬入などで会場に出入りする業者に対する事前説明会があり、それに伴い行われる同人誌印刷の関係者の懇親会では、最近の流行ジャンルなどの話題でそれなりに盛り上がるらしい。
「女性向けジャンルは流行の周期が早く、目まぐるしく変わる印象が強いです。あとは往年の人気作の新作発表などがあると、リバイバルのようなかたちで一気に流行しますね。男性向けは最近だとソシャゲ関連が人気ですね。その他、『東方Project』などいくつか息の長い人気ジャンルが軸にある印象です。
ちなみに成人向けの作品を含め、印刷・製本の現場スタッフはページ全体の仕上がりや出来栄えの確認作業は必ずしていますが、内容まで詳細にチェックすることはありません」
まだまだ同人誌市場は伸び続ける
矢野経済研究所によると、同人誌の市場規模は成長を続ける。即売会や委託販売、データ販売を合わせた消費金額ベースで、2023年度は1284億5600万円で前年比137.9%と、オタク関連市場で随一の伸びを見せた。
近年は、海外の参加者も含めて門戸を広げながらオタクの一大祭典となった現在のコミケについて、中澤氏はこう話す。
「コミケのようにリアルな即売会という場は、とても大切な存在だと思います。作家にとって本という『モノ』が介在する対面のコミュニケーションは、SNSで得られる感想や反応とは全く違う意味や重みを帯びますから。アナログなものは、デジタルと違って規制によって簡単に削除されることもありません。これからも、若い世代には自由で豊かな楽しい表現の場所を守り続けていってほしいですね」
紙の高騰や電子化で斜陽産業と呼ばれて久しい印刷業界だが、コミケや同人界隈に限っては、まだまだ熱気に満ちている。
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