「弁護士の仕事は、今までのキャリアの成功も失敗も糧になる」
――本当におめでとうございます。少し気が早いですが、弁護士としてどんな仕事をしていくかは決まっているんですか?
モナ すでに就職先は決まっていて、その事務所は企業法務が仕事の中心です。いろいろなジャンルの経験や勉強を積んでいくつもりですが、できれば著作権法を自分の専門フィールドにしたいと考えています。
――著作権法を選んだのはなぜでしょう。
モナ 著作権はメディアと関係が深い権利で、私はその世界に長くいて業界のいいところも悪いところも知っているので、お役に立てることが少なからずあるのかなと思っています。あとは今、著作権っておもしろいんですよ。AIの登場で大きな影響を受けて、新しい法律も次々できているところで。
――AIのような新しい分野だと後からの参入もしやすそうですよね。
モナ AIは法律の世界でもかなり存在感があって、東大発のベンチャー企業が開発した法律相談に乗ってくれるAIがすごいんですよ。法律の基本書が全部入っていて、かなり正確なアウトプットが出てきます。それを使えば簡単な相談だったら済んでしまいます。弁護士の仕事が減るかも、という人もいるくらいです。
――今から弁護士になるのに、それは脅威ですね。
モナ 逆に言うと、人間の弁護士はAIと違うことができる必要があるんだと思っています。知識や正確さだけだと人間はAIに絶対に敵わないので、経験と人間性がより大事になってくると思っています。
――法律なのに、人間ならではの部分が大事になってくると。
モナ 就職が決まっている事務所の代表に言われて印象に残っているのが、「弁護士の仕事相手は成功者ばかりじゃなくて、何か失敗をして困っている人もいる。だからこそ、今までのキャリアの成功も失敗も糧になる」ということでした。
私自身もこれまでの人生で、色々やらかしたり失敗したりしたことが本当にいろいろありました。こんなに人生の失敗を多くの人に知られている弁護士もそんなにいないと思うんです。でもだからこそ、「あの人は多くの失敗を経験してるからこそ相談したい」と思ってくれる人がいるかもしれないなと思ったんです。
――失敗したこと、それを知られていることが逆にプラスになることがある。
モナ そう言っていただいたんです。同じ理由で代表からは「モナさんは山本姓で仕事をしたほうがいいと思うよ」と薦められました。世の中に知ってもらった名前で仕事をする方が、人間としての経験やキャリアをわかってもらいやすいからと。それで考えて、司法修習から登録は旧姓の「山本モナ」を選びました。
――結婚する時にはむしろ山本姓から離れたいと思っていたところから、大きな転換ですね。
モナ でも山本姓で活動すると決めたら、なんだかすごく元気が湧いて来たんですよ。これまで自分の一部なのに遠くに行ってしまっていた魂が帰ってきたというか、説明しづらいんですが、「いま私は自分自身として存在している」という感じがあるんです。これまでも夫婦別姓についての議論について考えることはあったし、結婚して夫の姓になる時はなんの抵抗もありませんでした。でも山本姓を取り戻してみて、「ああこういうことだったのか」とやっと実感をともなって理解できた気がします。
――弁護士としては「山本モナ」として、あらためて新しい道を進むわけですね。
モナ そうですね。人生の全部の経験を生かして、誰かの役に立てる弁護士になれるように、まずは来年の司法修習、そしてその後の仕事に取り組んでいきたいですね。

