「パートナーの協力? 全くありませんでした(笑)」

 上映時のQ&Aによれば、映画の冒頭で妹のカバンから赤い風船が出てくるのは、『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』(2007)へのオマージュだそう。また言及はされなかったが、何度か出てくる長い陸橋は『ミレニアム・マンボ』(2001)の冒頭でスー・チーが歩いていた陸橋で、現地では「スー・チー橋」として知られるという。

――Q&Aでもホウ・シャオシェン監督のお話をされていましたが、スー・チーさんのパートナーであるスティーブン・フォン(馮徳倫)さんも映画監督でありプロデューサーであります(2017年の『グレート・アドベンチャー』などスー・チー出演作も撮っている)。スティーブンさんも映画人として何か協力などありましたか?

スー・チー 全くありませんでした(笑)。彼とは映画のスタイルが全く違うので、アドバイスとかそういったものは望んでいませんでしたが、完成してすぐ作品は観てもらいました。そこで私が嬉しかったのは、彼が一度も携帯を取り出さなかったことですね(笑)。その点で、この映画は半分くらいはうまくいったと思いました。

母を演じたのはシンガーとして知られる9m88(ジョウエムバーバー)

――『女の子』の映像は、とても緑が目につきます。もちろん台湾に緑が溢れているということもあると思いますが、市街地と自然を交互に見せることは意識したんでしょうか? そこにホウ・シャオシェン監督をはじめとした台湾ニューシネマの匂いを感じたのですが。

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スー・チー 特別意識したわけではないのですが、現在と違って、私が子供の頃はそこまで都市化が進んでいませんでしたので、学校にいてもかなり自然に触れる機会がありました。例えばセミの声がかなりうるさいと感じたこともありますし、鳥の声に耳を傾けたり、風や雲を感じたり、たくさんそういった機会がありました。そうしたものが1980年代を再現する一部になっていると思います。一方都会のシーンでは、建物の建設の音、つまり都市化を進めている音を取り入れて表現しています。私の映画の中では、かなり音の表現も大切にしました。

撮影中自ら演じて見せることも ©Mandarin Vision 華文創