高市首相はどのポジションか?
もうひとつ(4)を追加しておく。(2)のブランシャールの立場から出発したA・ミアン、L・ストローブ、A・スーフィの3人が組み上げた財政赤字論は、簡単にいってしまえば、「財政赤字を小幅に拡大すれば、赤字を増やしても債務対GDP比はむしろ減少するような諸条件のゾーンがある。しかし、そこから外れてしまうと赤字が増せば債務対GDP比も増加するようになり、g<rに至ってしまう」というものだ。日本では一部で注目されたが政策レベルでは本格的に議論されていない。
この議論を3人が最初に展開したのは2021年だが、翌年の「財政赤字のゴルディロックス理論」では「米国がg<rになるのは財政累積赤字が対GDP比で218%のとき、日本は446%」との意外な結論だった。ただしコロナ禍以前の19年を起点とし、米国の財政累積赤字が100%、日本が238%で金利はゼロ近傍という前提での議論である。
積極財政派として知られる高市首相は、(3)の匂いのする(2)を主張してきた。私は今の日本は(2)を基本に(4)の条件が成り立つゾーンを模索すべきだと思う。日本は3%台のインフレだが世界水準ではそれほど高くない(25年8月は2.7%)。失業率は2%台と低く、25年第2四半期経済成長は年率換算2.2%、トランプ関税などを織り込んだ予測では25年は0.9%(エコノミスト誌)、いま国債10年物金利は約1.6%、政策金利0.5%である。物価高対策ならば安易な消費減税より、米価対策に絞った政策が必要で有効だろう。
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このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2026年の論点100』に掲載されています。


