このような言葉の真の意味は、外国人観光客にはまったく理解ができません。その伝わらなさが自分たちでもわかっているから、多くの日本人は、観光客には直接言わずに不満をため込むか、日本人同士で不満を述べ合うのでしょう。

押し寄せる観光客を積極的に“活用”すべき

 この問題の根底には、日本社会が観光客のことを「一時的に訪れるお客さん」としてもてなす意識は強いものの、生活圏で「共存する存在」として受け入れる準備や発想がなかったからだ、と考えています。現代の観光客は、もはやお世話をして、帰ってもらうだけの存在ではなく、自分たちの社会インフラを共有する隣人となりつつある。

 この変化に対し、日本の行政や地域の対応は、問題が発生してから対処する受動的なものにとどまっています。

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 残念ながら、観光客が激減して、かつてのような静かな日本というものを取り戻すことは難しい。そこで私が提案したいのは、その場しのぎのオーバーツーリズム対策ではなく、オーバーツーリズムとの共存です。押し寄せる観光客を積極的に“活用”すべきなのです。

©KhunTa/イメージマート

 外国人観光客を批判する人たちは、「日本人が税金を払って作られたインフラにタダ乗りしている」と声を上げています。この数十年間たくさんの税金を日本で払ってきた私も、この考えがわからなくもない。観光客は日本のインフラを享受し、すぐに帰ってしまいますが、私たち住民は老朽化した水道管が壊れたり、足であるバスの運転手不足に悩まされたりしています。