観光税を取ってインフラ整備を
そこで、一つの案として観光税を多く取るというのはどうでしょう。京都を例にとると宿泊費ごとに段階がありますが、200円から1000円の宿泊税があります(2026年からは最高1万円まで設定することが可能になった)。しかし、大阪などに宿泊した日帰りの観光客には適用されません。イタリアのヴェネツィアでは、日帰りの観光客にも最大で10ユーロ(約1700円)の税を課していますから、日本の観光地が税金を取っても問題ありません。「観光客もインフラを使っているので、一緒に負担してくださいね」とストレートに本音を伝えれば不満は出ない。住民も「タダ乗りしている」とは思わなくなる。また、オーバーツーリズムの抑制にもつながるでしょう。
一方で、担い手不足の解消も重要な問題です。伝統産業や観光関連の施設ではスタッフの高齢化が進んだ上、語学力を備えた若い働き手が圧倒的に不足している。経済的なチャンスが目の前にあるのに、取りこぼしている状態なのです。
大学などの教育機関と連携し、ホスピタリティや異文化を学んだ若者を育成して、新しい風を入れるべきです。その中で、外国人材の活用も視野に入れてもいい。日本が好きで暮らす外国人は増えていますから、ゴミ出しのルールやマナーをアピールしてもらうのです。我慢するのをやめて、日本文化を理解している外国人と一緒に、アクティブに展開するのです。
そして「精神的なキャパシティ」を高めることも重要。異文化との交流を通じて、多様性を受け入れる考えを築いていくのです。ある老舗の湯豆腐屋さんの話ですが、観光客が持参したキムチを勝手に入れて食べたことがあったそうです。お店では最初、眉をひそめていた。しかし、発想の転換でキムチもメニューに入れてお金を取るようにしたところ、日本人にもウケて定番商品になった。これを文化の破壊とみるのか、新しい文化の受け入れとみるかは、まさに精神的なキャパシティの問題だと思います。
オーバーツーリズムを乗り越え、持続可能な観光国家として発展していくために発想を転換するタイミングが来ているのだと思います。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2026年の論点100』に掲載されています。


