いま韓国の投資家が注目している業種の1つが、観光だ。今年7月上旬までの1カ月で、外国人専用カジノと複合リゾートを運営するロッテ観光開発の株価が37%、同じくパラダイスも36%上昇した。

 理由の1つは、ユン・ソンニョル前大統領の内乱事件が一段落して政情不安が解消されたこと。そしてもう1つの理由が、近々始まる “中国人団体観光客へのビザ免除” だ。

 これは昨年11月に中国が、韓国など9カ国に今年末までのビザ免除を実施したことへの互恵的な措置。韓国の中央銀行は、“中国人団体観光客が100万人増えれば韓国の経済成長率が0.08%上昇する” と算盤を弾いている。

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 しかし歓迎ムードの一方で、国内ではビザ免除に対する不安の声も強い。これまで中国人を始めとする外国人観光客が繰り広げる “オーバーツーリズム” が、韓国でたびたび不評を買ってきたからだ。

済州島の道端で子どもにズボンを脱がせて用を足させる中国人観光客 韓国SNSより

 その主な舞台は、朝鮮半島の南西に浮かぶ済州島。人口約67万人、高知県とほぼ同じ緯度に位置する韓国の代表的なリゾート地だ。

 済州島の外国人観光客といえば、かつては日本人が主役だった。だが2010年の18万7700人をピークに下落へ向かい、2024年は7万8700人にとどまった。済州島は日本人観光客を確保するのに躍起になり、今年4月から10月末までパスポート取得費用を1万円支援するキャンペーンまで繰り広げている。

バス停で幼い男児に立ち小便をさせる女性の写真が大炎上

 一方、日本人に代わって観光客の主役となったのが中国人だった。韓国政府は2002年から、済州島に限って中国からの団体観光客のビザを免除。やがて中国の経済成長と韓流人気の高まりで中国人観光客は増え続け、2016年には306万1522人に達した。同年に済州島を訪れた外国人観光客のなんと85%を占める数字だ。

 その後は弾道ミサイル迎撃システムの配備を巡る韓中関係の悪化やコロナ禍で大幅に減少したが、2024年は138万30123人にまで回復、これは外国人観光客の72.5%を中国人が占めたことになる。

 済州島にとって観光客は生命線だが、中国人観光客が巻き起こすトラブルも尽きない。「済州島の中国人観光客」は、韓国のSNSをにぎわせる炎上ネタの常連だ。

 直近では7月10日、海水浴場近くのバス停で幼い男児に立ち小便をさせる女性の写真が登場。同様の光景はそれまでも頻繁に目撃されており、昨年6月には繁華街の路上、また昨年8月には屋外駐車場の一角で用を足す幼児と保護者らの映像などがSNSを駆け巡った。

 路線バスの開け放った窓から腕を伸ばしてタバコを吸う中国人女性の動画も出回っている。そのほかコンビニのイートインに残された膨大なゴミの山といった写真も、定番の炎上ネタだ。