地元の高齢者が立ち上がり、3カ月で1200件を超える “マナー違反”を…

 地元の済州警察庁は今年6月26日、意識啓発の広報活動として1時間の集中取り締まりを島内全域で実施。道路の横断禁止違反、シートベルト及びヘルメット非着用などを中心に計26人が摘発された。そのうち韓国人が半数の13人を占めたが、残りは中国人11人、ノルウェー人2人だ。

 済州島は観光地ということもあり軽い交通ルール違反くらいは黙認されがちだが、それだけでは済まない問題もある。済州島は、観光客として入国した後に失踪・不法就労する外国人の“通り道”としても有名なのだ。

 そんな済州島で、 “オーバーツーリズム” 問題に立ち上がったのが地元の高齢者たちだ。今年4月からは、高齢者福祉団体「ヌヨンナヨン(済州島の方言で「私とあなた」の意味」に参加する23人の男女が地元警察と共同で「公共マナー見守り運動」を開始。

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 済州島最大の繁華街や空港周辺を巡回し、7月までの3カ月間で1200件を超える “マナー違反” を是正したという。対象の大半は中国人だ。

 高齢者たちが対処したマナー違反行為の内訳は、道路の横断禁止違反379回、禁煙場所での喫煙338回、ゴミの不法投棄209回、障害者スペースへの駐車違反132回など。

 同時に困っている外国人観光客のサポートも行い、道案内は200回近くに及んだほか、6月にはパスポートやクレカが入ったカバンをなくした中国人観光客を派出所まで案内している。高齢者たちは支払いのできない中国人に派出所までのタクシー代も提供し、大いに感謝されたそうだ。

 高齢者だけでなく、地元小学校の活動も注目を集めている。この学校は全学年対象の授業で外国人観光客のマナーについて話し合い、地元自治体への提案として発表した。内容は迷惑行為の通報を受けつけて対処する機関の設立、空港で韓国でのマナーを説明する冊子などを配布、また主要観光地に同様の案内板を立てる、の3つだった。

ソウル市内の百貨店で買い物をする中国人観光客たち ©THE FACT JAPAN

ソウル周辺ではK-popの聖地巡礼に住民が悲鳴

  “オーバーツーリズム” 問題は、もちろん首都ソウルも例外ではない。

 ゆるやかな斜面に小さな伝統家屋が立ち並ぶ北村韓屋マウルは、市民が暮らす古い民家を文化財として自治体が保護してきたエリアで、かつては「冬のソナタ」ロケ地として熱心なドラマファンの日本人が訪れる程度だった。

 だがK-popの盛り上がりにともない、MVやアイドルのスナップなどを通じて世界的な知名度が一気に拡大。閑静だった一帯は、外国人観光客が殺到する一大観光地となった。

 しかし急増する観光客たちのマナーに住人たちから悲鳴があがり、その苦情を受けて自治体は観光客の立ち入り時間の制限や、マイクロバスの乗り入れ禁止などを導入した。今年3月からは時間外に立ち入った観光客に過料を課すなど、観光客への対応に腐心している。