一方、「勝ち組」である富裕層や知識人は、SNSだけでなく、海外メディアを含めた様々な情報、日本人との直接交流や訪日経験をもとに、多元的な日本観を形成している。結果、現在の日本や日本人に好意を持つ傾向が強い。
中国には「潤」(「RUN(ルン)」)という隠語がある。英語の「RUN」(逃げる)とかけたもので、豊かになるため、あるいは統制や監視から逃れるため、海外に脱出するという意味だ。「潤日(ルンリィー)」(日本への脱出)急増の背景には、言論を封殺し、事実を語らせず、ナショナリズムを高める体制の息苦しさがある。
「白紙」抗議から日本行きが加速
特に非人間的なロックダウン(都市封鎖)が徹底されたゼロコロナ政策に反発し、22年11月、若者たちが声を上げることすらできない言論統制を「白紙」にたとえ、頭上に高く掲げる抗議行動が全国で展開された。その後、日本を目指す若者が増えた。
たとえば、東京大学には25年5月時点で、中国人留学生が3486人在籍。10年間で中国人留学生は2・7倍に増えた。学部・大学院全体で中国人の割合も12%に達している。
このほか都心のタワーマンションなど不動産を次々購入したり、東京都文京区など文教地区の小学校に子どもを「教育移住」させ、有名中学受験塾に通わせ、東大を目指したりする富裕層も相次ぐ。東京に拠点を移し、YouTubeなどで中国大陸を含めた世界中の中国人に向け、共産党体制の問題を発信し、言論の自由や人権意識の重要性を訴える知識人も増えている。
「在日中国人百万人時代」と共生への課題
26~27年には、「在日中国人百万人時代」を迎えるとの見通しもある。「日本人ファースト」という言葉が注目を集めるなか、習近平体制の長期化によって増え続ける在日中国人との共生という課題が問われることになる。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2026年の論点100』に掲載されています(一部修正)。



