「安いマンションはない」芦屋が“住みたいけど住めない街”になってしまったワケ

 いま芦屋で新築マンションを買える層は限られている。500万円ぐらいの年収の人が、将来を見込んで買うというのは難しい。“住みたいけど住めない街”というのが実情で、芦屋は終の棲家の対象に入らなくなってしまったのだ。

「『新築で3000万円ぐらいのマンションってないんですか?』と、たまに聞かれます。大阪や神戸にはありますが、芦屋にはありません。

 デベロッパーが計画するプロジェクトの計算方式で、一番大きいのは土地の値段。そして芦屋は高くてもせいぜい5階建てぐらい。難波のように高さを制限なく建てていい場所ではなく、建築基準法の用途制限がネックとなって、低層マンションの高級路線化が進む。だから安いマンションはないんです。

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 もちろん、容積の制限もあります。用途制限の中で建てても、そんなに大きなボリュームのマンションは建てられない。それでどうしても売り出す価格が8000万~1億円になってしまう。芦屋というブランド価値もあるし、これを事業として成功すると思うからデベロッパーは投資するんです。

 過去に扱った芦屋市内の物件で、一番安かった分譲マンションで4000万~5000万円。年収500万円の人を狙おうと思うと、3000万~4000万円の設定をしないと購入できない。その辺りの金額に合わせるためには、場所を少し南のほうに変えて建てる必要があります」(同前)

兵庫県芦屋市にある超高級住宅街・六麓荘町 ©加藤慶

1億3000万円前後のマンションがすぐに売れていく

 たとえば、芦屋川のある芦屋浜海水浴場跡地から南宮浜公園に抜ける東西の道路。西は尼崎市まで続く臨港線沿線がそれにあたる。

 それ以外のところでは高級志向が強く、8000万円から1億円が芦屋の相場だ。エントランスの趣も、5000万円クラスとまったく違う。どこかの高級ホテルのようで、駐車場だってきちんと整備されていないと売れない。

「上のクラスの販売価格になると1億3000万円前後。『誰が買えるの?』と思っていても、すぐに売れていきます。実際、デベロッパーの担当者に聞くと、『価格が高いほうから売れていく』っていうぐらいで……。戸建てに限らずマンションでも高級志向という傾向はしばらく続くんでしょうね」(同前)

 富裕層の懐具合は温かそうだ。