「富豪が住み豪邸が並ぶ関西屈指の住宅街」というイメージがある芦屋。しかし、実際のところ、どんな街なのかをよく知らない人は多いのではないだろうか。芦屋に住んできた人々、芦屋に住んでいる人々はいったいどんな生活を送り、どのようなことを考えているのか。

 ここでは、芦屋の真実に迫ったフリーライター・加藤慶氏の著書『誰も知らない「芦屋」の真実 最高級邸宅街にはどんな人が住んでいるか』(講談社)より一部を抜粋して紹介する。(全4回の2回目/1回目から読む)

日本屈指の高級住宅街・芦屋。写真は芦屋市民に欠かせないスーパー「いかり」 ©加藤慶

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芦屋は「住んでみたい街」1位の常連だったが…

 住友不動産など7社が運営する新築物件サイト「メジャーセブン」の会員を対象に実施している「住んでみたい街アンケート」。その1位の常連だった芦屋が、2016年、ついにトップから陥落した。それも1位から一気に10位に転落。前年の2015年は1位で調査開始から11年間で1位が9回。2位2回だった。

 どうして、いきなり順位を落としたのだろうか。

 当時、芦屋では有名デベロッパー4業者が競い合うようにマンションを建設していた。その費用を坪単価で計算すると、坪300万円ぐらいから最も高いデベロッパーで450万円。マンションの坪単価がその価格になってくると、30坪の分譲マンションでは1億円を超える。

 新しいマンションの価格設定は、初めから高所得者しか狙っていなかった。ターゲットは西宮市の中でも山の上のほうの富裕層。苦楽園と甲陽園の山手に位置する住宅街の柏堂町や甲陽園目神山町などの自宅を4000万~6000万円で売って、新しく建てたマンションに5000万円ほどの貯蓄をはたいて引っ越しさせようという計画だったと言われている。年齢も年齢で、良い眺望は欲しいけれど、坂を上がるのがしんどい。そういう人を大手のデベロッパーは狙ったのだ。