「刀剣乱舞」から「ワンピース」まで…新規客層開拓の試み

 だからこそ、漫画やアニメ原作の新作(近年では「ワンピース」「NARUTO」「風の谷のナウシカ」「ルパン三世」など)や、「刀剣乱舞」「ファイナルファンタジー」といったゲーム原作の新作歌舞伎など、新規客層開拓のための手段も講じられる。また、上方歌舞伎の拠点でありながら、採算の難しい大阪松竹座を閉館する(8月28日に発表。具体的な今後の予定については、まだ正式発表がない)といった厳しい事態を迎えることもある。

 現在の歌舞伎界は、およそ30年から40年に一度の、世代交代の大波の中にある。戦後歌舞伎を支えた世代は昭和の末から平成一桁ごろに退場し、今、平成の歌舞伎を牽引した世代が、70代後半から80代を迎えているのである。

 2025年には「仮名手本忠臣蔵」「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」という古典演目を代表する三作が、揃って通し上演(丸一日がかりで、作品全体を上演する形態)された。三作すべてに出演の大幹部世代は片岡仁左衛門だけで、仁左衛門もひと月の半分だけに出演して、残る半分は若い世代に任せるといったダブルキャスト方式が取られた。仁左衛門の体力に配慮しつつ、次世代に経験を積ませるという一石二鳥の案だった。執筆時までに上演された「忠臣蔵」「菅原」は、切符の売れ行きもいい。映画「国宝」からの新規客層が、古典演目回帰をもたらすかどうかが、今後を占うだろう。

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社会現象になった映画「国宝」 ©2025映画「国宝」製作委員会

「まことに層が厚い」次世代スター候補たち

 では、今後の歌舞伎界をリードしてゆくのは、どういった面々になるのか。

 ここでは、次世代の先頭をゆく40代から50代世代の、一歩先の時代をうかがう20代から30代にかけての若手を紹介しよう。この年代はまことに層が厚く、誰がスターとして抜け出すか注目される。これから贔屓を選びたい向きにもうってつけで、今後数十年の楽しみが約束されるだろう。なお( )内の年齢は2026年1月1日時点のものとする。

 古典の女方として、すでに一定の地位を確立しているのは、2024年に襲名した中村時蔵(38)で、今後多くの大役でさらに飛躍するはずである。弟の中村萬太郎(36)は立役で、童顔小柄ながら口跡の良さに定評がある。