バラエティ番組、映画や大河ドラマでの活躍も

 もっか次々と降ってくる大役で結果を出し続けているのが尾上右近(33)で、「娘道成寺」「鏡獅子」「四谷怪談」など、立役、女方、踊りと、多彩な役柄を兼ねる才能を開花させつつある。テレビのバラエティ番組にも顔を出しているほか、映画出演でも爪痕を残しているが、本領は客席の空気を惹きつける古典の舞台で、2026年には10回目となる自主公演「研の會」のファイナルを迎える。

尾上右近オフィシャルサイトより

 踊りを得意とする若手が多いのもこの世代の特色で、日本舞踊家の吾妻徳穂を母に持つ中村壱太郎(35)は、中村鴈治郎家の後継として上方歌舞伎を背負う。今は女方が主だが、いずれ立役にも才能を示すだろう。早世の名人坂東三津五郎の遺児坂東巳之助(36)は、線の太い役に挑みつつある。中村鷹之資(26)は、柄も芸質も父中村富十郎を彷彿とさせ、必ずその稟質(ひんしつ)を炸裂させる時が来るだろう。

中村鷹之資のインスタグラムより。右は妹の芳澤壱ろは

 素顔の男前抜群の中村隼人(32)は、スケールの大きさを身につけつつある。中村歌昇(36)は渋さに強みを見せ、弟中村種之助(32)は立役・女方・舞踊とも満遍なく巧み。中村勘三郎の部屋子の中村鶴松(30)や、中村芝翫(しかん)の息子の三兄弟、中村橋之助(30)・福之助(28)・歌之助(24)も自主公演で勉強を重ねている。女方としては、長身を活かす坂東新悟(35)、中村児太郎(32)、かわいいと人気の中村米吉(32)や中村莟玉(かんぎよく)(29)らが個性を競っている。

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『べらぼう』にも出演の中村隼人(本人インスタグラムより)

 20代で、2025年に最も伸びたのは市川染五郎(20)で、超重量級の大役「太功記十段目」の武智光秀と、超絶技巧派の大役「寺子屋」の武部源蔵の好演で目を見張らせ、2026年には「ハムレット」主演が予定されている。香川照之の長男市川團子(だんこ)(21)も大役続きで、2026年には大河ドラマに出演予定。

存続を賭けた「覇権争いの戦国時代」へ

 歌舞伎俳優が他ジャンルにも挑戦することで存在感を示した時代もあったが、今後もし、古典歌舞伎で観客をよぶことができる才能が現れれば、その主が歌舞伎界を牽引するだろう。安易な現代化は見透かされるのも早く、最後にモノを言うのは熟慮を重ねた温故知新である。遠からず歌舞伎界は、その存続を賭けて、覇権を争う戦国時代に突入するだろう。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2026年の論点100』に掲載されています。

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