友人の結婚式で出会った男女が、ひょんなことからレンタカーに乗り合わせて旅に出る。カーナビに導かれてたどりついたのは、くぐり抜けると人生のターニングポイントをやり直せる“不思議なドア”だった――。

 

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「すこし・ふしぎ」なロマンティック・コメディ

 映画『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』は、かつて藤子・F・不二雄が「すこし・ふしぎ(=SF)」と呼んだような設定のロマンティック・コメディ。出演には『バービー』(2023年)のマーゴット・ロビー、『THE BATMAN ―ザ・バットマン―』(2022年)のコリン・ファレルを迎えた。

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 本作を手がけたコゴナダ監督は、『コロンバス』(2017年)や『アフター・ヤン』(2021年)で注目を浴びた才人。日本の巨匠・小津安二郎を敬愛し、『東京物語』(1953年)などの脚本家、野田高梧(のだ・こうご)にちなんだ名前で活動する彼が、創作の裏側を語ってくれた。

 

「『アフター・ヤン』のあと、送られてきた脚本をいろいろと読みながら、自分でも脚本を書いていました。私はあまり他人の脚本に惹かれないのですが、この作品にはとても興味を持てたんです。いくつかのシーンが心に響き、もっと探究してみたいと思いました」

 脚本は『ザ・メニュー』(2022年)のセス・リース。本作はコゴナダにとって、メジャースタジオで手がける初めての長編映画であり、初めて他者の脚本を映画化した作品となった。「これまでとは違うことをしたいと思っていたんです」とコゴナダは言う。

 高校時代の初恋とミュージカルの思い出。母が息を引き取った日のこと。そして、うまくいかなかった過去の恋愛――。ロビー演じるサラとファレル演じるデヴィッドは、“不思議なドア”を通じて互いの過去を体験する。そこで相手を知り、自らを理解し、愛に触れる。

 

 脚本の執筆プロセスにはコゴナダも深く関与し、さまざまなアイデアを提案した。

「息子とアニメを観ていて、“実写でアニメのようなことをしてみたい”と思っていました。そこで取り入れたのが、演劇的な要素や、過去へとつながるドア。初期の脚本ではデヴィッドはもっと若い設定でしたが、コリンと話しながら、人生に疲れたような人物にしようと決めました。そこでキャラクターやセリフ、過去との関わりも変更しました」