そんななか毎日新聞がスクープを放った。

『高市首相の答弁書に「台湾有事答えない」と明記 存立危機発言当時』(12月11日)

今回政府側が公式に認めた格好となった

 政府側が事前に用意していた答弁資料には台湾有事について「政府として答えない」とも明記されていたのである。つまり政府は、言い切らず、踏み込まず、戦略的曖昧性を保つ、という従来の判断をしていた。それにもかかわらず、首相はその想定を超えて具体的な言葉を口にした。これまでの報道でも首相がアドリブで発言していたことは伝えられていたが、今回政府側が公式に認めた格好となった。※答弁資料は、立憲民主党の辻元清美参院議員の質問主意書に関連して、政府が辻元氏に開示した。

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 注目は、開示された答弁資料の想定問答の形式だ。

 岡田氏は質問通告で「高市首相は昨年9月の総裁選の際に中国による台湾の海上封鎖が存立危機事態になるかもしれない旨の発言をしているが」と高市氏の過去の発言を前提に尋ねていた。

 これまでのような一人の議員としての立場ではなく、首相になってからも同じことを言うのか?との確認をしているように読める。もっと言えば、首相になったからには「そうではないという答弁をもらうため」という狙いがあったのだろう。※こうした質問意図があったことは岡田氏はTBSラジオ『荻上チキ・Session』でも述べている(12月3日)。

 歴代の首相はどんな状況が存立危機事態にあたるかの線引きをあえて曖昧にしてきた。侵略を考える相手に手の内を明かすことにつながるからだ。首相経験者の一人は国会で「言っていいわけがない」と断じた(日経新聞)。

 しかし高市首相はアドリブで「持論」を述べた。国会論戦の醍醐味で言うなら、質問する側からすれば首相に存立危機事態について聞くのは当たり前であり、答える側からすればいかに従来の見解どおりに戦略的曖昧さで乗り切るかも当たり前である。このせめぎ合いや個人差が国会論戦の見どころだったりする。答え方で現首相のキャラクターも見えてくるからだ。

 ちなみにこの高市発言が出たのは話題となった「午前3時からの勉強会」の日だ。自分の言葉でわかりやすくという姿勢が裏目に出たと言えないか。

 実は、こうした事態の予兆はすでにあった。いわゆる「奈良のシカ」発言である。