大手新聞が「貧しい漫画が多すぎる」とバッサリ

 だが、世間ではおたくバッシングの嵐が吹き荒れ続ける。1990年9月4日、福岡県は16点のコミックスを有害指定した。

 朝日新聞は同日付の社説で『貧しい漫画が多すぎる』と題して「こうした漫画や写真を幼い時から見せられて育つと、どんな人間になるのだろうか。文化の将来を考えて、そら恐ろしい気持ちにもなる」と断じた。

同人誌界隈を震撼させた“一斉摘発”

 また、和歌山県田辺市の宗教団体の女性信者が地方紙「紀州新報」に、出版物の行き過ぎを規制するよう行政当局の対策を強く促す趣旨の投稿をした。これを契機として、有害コミック排斥の住民運動が起こり、この運動は全国のPTAにも波及する。

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 このとき和歌山県では『いけない!ルナ先生』(上村純子/講談社)、『ANGEL』(遊人/小学館)、『冒険してもいい頃』(みやすのんき/小学館)、『みんなあげちゃう♡』『シンデレラ・エクスプレス』(ともに弓月光/集英社)、『レモンエンジェル』(わたべ淳/集英社)の6点を「有害指定」し、その後も各自治体が個別に有害図書を指定する状況が続いた。

 出版社側はやむなく性的描写の自主規制に乗り出し、有害図書として指定されたコミックスの絶版や回収、刊行済みコミックスの修正、雑誌での連載打ち切りなどで対応するのであった。

 なお、当時の同人誌界隈では、美少女系同人誌はコミケのような同人誌即売会だけではなく、マンガ専門店などでも販売されていた。当時の美少女系同人誌は、現在の基準に照らし合わせれば「無修正」に該当し、それが誰でも町中で買える状態にあったことは付言しておく。

 さらに1991年2月22日、美少女系同人誌を扱っていた書店やマンガ専門店が猥褻図画販売目的所持で摘発される。1991年2月25日付の「読売新聞」では、書泉ブックマート、コミック高岡、まんがの森の各店長らの逮捕を実名で報道している。この騒動は同人作家、サークル関係者、印刷業者にまでおよび、70人以上が検挙されたのである。

 コミケにとって追い打ちとなったのは、千葉県警による幕張メッセへの事情聴取であった。