事情聴取が行われた経緯

 ただ、このとき警察が動いたきっかけについては諸説ある。

 幕張メッセを管轄する千葉西警察署に届けられた拾得物のなかに無修正の同人誌が含まれていた――つまり「落とし物に無修正のエロ同人誌があったから警察が動いた」とする都市伝説がいまもって根強いが、これに関しては憶測の域を出ない。

「コミックマーケット40周年史」や類書では「善意の市民が千葉県警に通報(もしくは美少女系同人誌を送付)した」と記されており、これが真相なのだろう。

ADVERTISEMENT

 ともあれ、通報を受けたからには千葉県警は動かざるを得ず、コミケット準備会および幕張メッセが警察の事情聴取を受けることになり、その結果として幕張メッセはコミケへの貸し出しに「NO」を突きつけるのであった。

コミケ開催に「NO」を突きつけた幕張メッセ(写真:kawamura_lucy/イメージマート)

 事件報道や検挙騒動のさなかに開催された「コミックマーケット39」(1990年12月23、24日)は幕張メッセで問題なく開催できていたのだから、コミケット準備会としては青天の霹靂だっただろう。これが「コミケ幕張メッセ追放事件」のあらましである。

あわや開催中止の大ピンチ

 幕張メッセから「会場を貸し出せない」と告知された時点で「コミックマーケット40」(1991年8月16、17日)のサークルの受付はすでに終えていた。開催の告知もされていた。このまま代替会場が見つからなければ、開催できなくなってしまう。

 そうした緊急事態下でも関係者の努力もあり、「コミックマーケット40」は以前と同様に晴海の東京国際見本市会場で開催することになったが、当時を知る関係者は誰もが「ギリギリだった」と書き残している点が印象深い。

 ただ、東京国際見本市会場側からも貸し出しに難色を示されたという。時勢を鑑みると、それも致し方のないことだろう。