私たちの暮らしや経済を根底で支える中小企業を舞台に、倒産、借金、不正、争い……働く者たちの苦悩と葛藤を描いた池井戸潤さんの短編集『かばん屋の相続』が、WOWOW(全4話12月27・28日放送)でドラマ化されることになりました。

 これを記念し、原作者の池井戸潤さんと、ドラマに出演する俳優の石丸幹二さんのスペシャル対談が実現。お二人は、社会現象を巻き起こしたドラマ『半沢直樹』で、原作者と出演者として出会って以来のお友達。作品の裏話からプライベートでの交流など、縦横無尽に語り合っていただきました。

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連続ドラマW 池井戸潤スペシャル「かばん屋の相続」
『かばん屋の相続』(池井戸潤)

「エキストラと間違えられて……」

石丸: 初めてお会いしたのは、池井戸さんがドラマ『半沢直樹』の撮影現場にいらした時、皆でご挨拶しました。TBS緑山スタジオでしたね。

池井戸: 僕、あのときエキストラと間違えられたんですよ。スタジオの片隅にいたんですが、「キミ、あのへん行って」と言われたんで、そこに立っていたら、プロデューサーの方が来て。エキストラと間違われているなとは思ったんですけど。指示していたスタッフは「何やってんだ!」って怒られていました。

石丸: とんでもない登場でしたね(笑)。銀行店舗内のシーンで、お客さん役のエキストラの人たちが大勢いましたからね。作家さんって、もっと怖くて厳しい目で現場をチェックされるのかなと思っていたんです。でも、池井戸さんはすごく楽しそうにお話しされていて。とても温和な方だなと。僕にとっては、池井戸さんにお会いできたハッピーな日でした。

池井戸: 僕はもう、たくさんいる出演者の方々の顔と役名が一致しなくて。だんだん動揺してきて「早く帰ろう」と思っていました(笑)。もちろん、浅野支店長(石丸さんの役名)はさすがに覚えていましたけど。

©文藝春秋/撮影 松本輝一