「なんとか“白い役”にしていただけませんかって」
石丸: 実は『半沢直樹』って僕にとっては大きな転機だったんです。それまで所属していた劇団四季を辞めて、映像の仕事もやってみたい、それも今まで演じてきたようないわゆる“良い人間の役”だけじゃなく、新しい挑戦となる役を演じてみたいと思っていたんです。そんなときにいただいたのが、この浅野支店長役でした。僕にとって初めての“白くない役”への挑戦でしたね。
池井戸: 撮影の時、やたらお互いの顔が近いんですよね。
石丸: 近いんですよ(笑)。鼻と鼻がすれ合うくらい。(半沢直樹役の)堺雅人さんが事前に「石丸さん、僕ちょっと接近していきますので、びっくりしないでくださいね」と言ってくれたんですが、想像以上でした。そのおかげですごく迫力のある、いい絵になっていましたね。ただ、あまりに黒い役のイメージが強くて、放送中から町ですれ違う人に舌打ちされたり、飲み屋で「ちっ」て言われたり(笑)。
池井戸: 演技と現実を混同してます。
石丸: 本当です。僕のミュージカルや演劇を観たことがない方々からすると、「石丸幹二=浅野支店長」という刷り込みから始まっているので。一時期は髭を生やして変装しながら世の中を歩いていました。でも、そういった意味では知ってもらえたってこと自体、僕にとってはすごく嬉しいことでしたし、『半沢直樹』があって今があるなと思っています。
池井戸: 嬉しいです。
石丸: だから、その後『ルーズヴェルト・ゲーム』に出演させていただくときは「なんとか“白い役”にしていただけませんでしょうか」とお願いして、黒から白の役にしていただいたんです(笑)。
「作家さんというよりは、親しいお兄さんみたいな感じ」
石丸: 池井戸さんが劇団四季の機関誌「ラ・アルプ」に連載をされていたご縁もあって、飲みにでかけたことがありましたね。
池井戸: 劇団四季の方たちと一緒でした。あのとき、ものすごく飲みましたよね。僕はヘベレケになって帰ったのに、石丸さんは次の日の昼には生放送で歌っていました。
石丸: そんな無謀なことを(笑)。でも、楽しい会でした。
池井戸: 石丸さんのコンサートにもよく行かせてもらっています。サントリーホールでのオーケストラコンサートも。
石丸: 来ていただいて、ありがとうございます。
池井戸: クラシックの殿堂であるサントリーホールでオーケストラコンサートをやるミュージカル俳優って、なかなかいらっしゃらないですよね。敷居が高いですから。
石丸: そうやって池井戸さんは色々なコンサートに足を運んでくださって、感想をいただいたり。僕にとっては、作家さんというよりは、なんだか親しいお兄さんみたいなお付き合いをさせてもらっています。

