空母の航行位置は「日本の領空まで10分から15分で到達する距離」
今回、空母「遼寧」が航行していた位置は日本のADIZにあたる。A氏は「日本の領空まで10分から15分で到達する距離です。空母から中国軍機が発進した瞬間にスクランブルをかけたと思います」と語る。
速度も機動性も高い戦闘機であれば、すぐに対応しなければ手遅れになる。中国は事前に訓練を通告していたと主張するが、日本側は詳しい位置や高度を示すノータム(航空情報)はなかったとしている。ただ、中国の主張通りのノータムが出ていたとしても、空自がスクランブルをしない理由にはならない。
徳島文理大学教授を務める高橋孝途元海将補は「『ノータムがあれば、スクランブルをかけなくてもいい』ということになれば、相手が演習を偽装して突然、領空侵犯や武力攻撃に至るケースを防げない」と説明する。
スクランブルした2機のうち、1番機(リーダー機)に搭乗するのが編隊長。2番機がウイングマンで基本的にサポートに回る。A氏の場合、目視で数百メートルの距離まで接近した経験が何度もある。
「領空侵犯の恐れがあれば、国際緊急周波数を使って針路変更などを要請します。1番機が英語、2番機が対象国の言語で呼びかけます」(A氏)
A氏の経験から、ロシア機はほとんど事前に計画したとおり、まっすぐ飛ぶが、中国機は現場の判断も踏まえて飛行する傾向があるという。
警告音が甲高くなる火器管制用レーダー照射
レーダーが照射されるとF15のコックピットはどうなるのか。
A氏によれば、捜索用レーダーが照射された場合はピピピというそれほど高くない音で知らせてくるが、火器管制用レーダー、敵機によるミサイル発射の順に、警告音も甲高く、うるさくなる。A氏の場合、捜索用レーダーを照射された経験も何度もあるという。
「捜索用レーダーを当てられても、特段の驚きはないですね。日常茶飯事といった感覚です」(A氏)
そのうえで、A氏は「火器管制用レーダーが当てられると、いつもと音が違うので、まずは間違いじゃないかと思うでしょう。でも、それが30分も続くことはまずありえません。明らかに相手に意図があります」と語る。「相手機から距離を取りたいと思うでしょうが、これで撃たれたら、やられるという感覚になるでしょうね」。
A氏によれば、新しい戦闘機のレーダーは捜索用と火器管制用のモードの切り替えが複雑になっている。F15がロックオンを伝える警報音を出しても、相手機がロックオンをしていないケースもあり得る。防衛省が明確に「火器管制用レーダー」と断言しないのも、こうした技術的な背景が考えられるという。
