「妻が、暴れるんです」「その辺にあるものを手あたり次第に投げたり。私につかみかかってくる時もあります。両腕をつかまれて揺さぶられたり……」
64歳の達夫さんは、62歳の妻・百合子さんの暴れっぷりに困ってカウンセリングを訪問した。時には包丁を持ち出すこともあると言い、真冬にもかかわらず耐えかねて公園に逃げて寝泊まりしたこともあるという。
年間に20万件弱も発生している「離婚」。夫婦の衝突や、それぞれの抱える葛藤の行きつく果てといえるが、その前段階でお互いのことを理解し合えれば「壊れかけた夫婦」は再生できる。長年、多くの夫婦と向き合ってきたカウンセラー・山脇由貴子氏による新著『夫婦はなぜ壊れるのか カウンセリングの現場で見た絶望と変化』から、一部抜粋してお届けする。なお、プライバシーへの配慮から本文中の名前は全て仮名。(全2回の1回目/続きを読む)
◆◆◆
最初に相談に来たのは夫の達夫さん(64歳)。
「妻が、暴れるんです」
百合子さん(62歳)が怒って暴れる事に困っているのだそう。
「どんな理由で暴れるんですか?」
私が尋ねると、
「私が何か妻に注意した時もありますけど、なんで怒り出したのか分からない時もあります。この間は洗濯物を干していたら『やり方が気に入らない!』って怒り出しました。いつも通りに干していたんですけど」と達夫さんは言います。
「暴れる、というのはどんな風に?」
さらに私が尋ねると、
「本当に、手が付けられないというか……」と達夫さんは困り切った表情を浮かべて言います。「その辺にあるものを手あたり次第に投げたり。私につかみかかってくる時もあります。両腕をつかまれて揺さぶられたり……、叩かれる事もあります。一度は包丁を持ち出されて……」
