「妻が、暴れるんです」「その辺にあるものを手あたり次第に投げたり。私につかみかかってくる時もあります。両腕をつかまれて揺さぶられたり……」

 64歳の達夫さんは、62歳の妻・百合子さんの暴れっぷりに困ってカウンセリングを訪問した。時には包丁を持ち出すこともあると言い、真冬にもかかわらず耐えかねて公園に逃げて寝泊まりしたこともあるという。「本当に、穏やかな日々だけが望みなんです」という達夫さんの望みが叶う日は、来るのか。

 年間に20万件弱も発生している「離婚」。夫婦の衝突や、それぞれの抱える葛藤の行きつく果てといえるが、その前段階でお互いのことを理解し合えれば「壊れかけた夫婦」は再生できる。長年、多くの夫婦と向き合ってきたカウンセラー・山脇由貴子氏による新著『夫婦はなぜ壊れるのか カウンセリングの現場で見た絶望と変化』から、一部抜粋してお届けする。なお、プライバシーへの配慮から本文中の名前は全て仮名。(全2回の2回目/前回を読む

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凶暴すぎるDV妻は、いかにして生まれたのか 画像はイメージ ©siro46/イメージマート

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2人目の娘が生まれてから、妻に「異変」が

 まずは達夫さんの生い立ちです。達夫さんは地方出身。小学生の時に父親が亡くなり、兄弟4人を母が1人で育てたそう。そのため、子どもの頃から家事をやるのは当然だったとの事。経済的にも厳しく、食べる物に困る事もあったので、食事はとにかく「食べられればいい」。

 高校は夜間へ、日中は働いて家計を助けていました。大学にも行きたかったけれど断念し、単身上京して就職。実家に仕送りもしていた為、食べるのがやっとの生活だったそう。百合子さんとは職場で出会い結婚。当時職場結婚は許されず、ただ、達夫さんの収入だけでは生活が厳しかった為、百合子さんは転職し、共働きで結婚生活がスタートしたそうです。

「2人とも働いていたので、経済的にはぐっと楽になりましたね。今考えるとあの当時が一番余裕があった気がします」

「2人目が生まれてからは明らかにイライラする日が増えました」

 さらに、達夫さん夫婦は、下の娘が小学校高学年の時に一戸建てを購入しました。

「無理に組んだローンなのは2人共分かっていたのですが、どうしても家が欲しくて」

 けれど不運が2人を襲います。