妹の結婚を破談させた過去

 妹は慌てて開いているベランダの引き戸を閉めました。

「隆史、どうしたの!」

 倒れている僕を見て、母が駆け寄ってきました。

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「ベランダに人がいるなんて思わないから、鍵を閉めて出かけただけだよ。そっとしときなよ、どこも悪くないんだから」

 妹はそう言って、心配する母親を宥めていました。

 太陽が照り付ける真夏の午後も、今日と同じように妹が突然家に戻ってきて僕に暴力を振るい、ベランダに引きずり出し鍵をかけました。妹はそのまま出かけてしまい、僕は放置され、熱中症で倒れていました。

 その時も妹は母に、ベランダに僕がいることに気づかずに鍵をかけてしまったと言い訳し、僕も否定しませんでした。妹にいじめられているなんて口が裂けても言えません。

 僕は、妹の結婚を破談にしてしまったのです。だから彼女は僕が死んでくれることを心の底から望んでいます。

 正直、生きる希望なんてありません。ただ、妹に促されて死ぬのだけは嫌だと、ここまで踏ん張ってきました。