実写邦画の歴代興行収入記録を更新した今年度最大の話題作『国宝』。
自らの人生を投影するような役柄を演じた寺島しのぶが、その演技に込めた思い、そして歌舞伎界に育った自身の生き様を語った。
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キャスティングされて「おー! 来たなあ」って(笑)
現役で舞台に立つ“国宝”七代目尾上菊五郎。その長女、寺島しのぶが映画『国宝』の中では歌舞伎役者花井半二郎の妻を演じる。歌舞伎の家で育った彼女から見たこの映画、そして国宝の娘として生きた世界とはどんなものなのか。
6月6日に公開された『国宝』は興行収入173.7億円を突破(11月25日時点)し、実写邦画で歴代トップに立った。近年稀に見る大ヒット作だが、もちろん未見の人もいる。そのひとりが、劇中で上方歌舞伎の名門を支える女房・大垣幸子役を務める寺島だ。
「私、まだ観てないんですよ。そう話すと驚かれるんですが、自分が出演した映画は2、3年経ってからじゃないと自分の演技が気になって観られない。でも、『国宝』はたくさんの方から感想をいただくので、とても嬉しいです」
吉田修一の原作が出版されたのは2018年のこと。寺島は映画化が決まる前から、原作を読んでいたという。
「この役はどなたがやるのか楽しみな面もあったんですが、私がキャスティングされたので、『おー! 来たなあ』って(笑)。自分のすべてを商売にしてしまうのが役者。無駄になるものはなにもないんです」
世間から歌舞伎という世界は見えづらく、実像はつかめない。フィクションである映画にリアリティを加えたのは、国宝の血を引く“寺島しのぶ”という女優の存在だった。
「生きてきた環境、見てきたもの、感じてきたものをこの映画に投影することが自分の役目だと思いました。もちろん、フィクションはフィクションなんだけど、そこに私がいることで、観客のみなさんにふっと、リアルだと感じていただくところがあればいいなと」
