不正入試事件で世を騒がせた東京医科大学で、またもや問題が発覚しました。女子受験者の1次試験の点数を一律減点して、女子入学者数が増えないよう操作していたというのです。

 同大の入試で不合格だった女性の方々は、「もしかしたら受かっていたのかも」という悔しい思いを拭いきれないことでしょう。今後、東京医大は本来なら合格していた人たちに対する、救済措置や損害賠償を迫られるかもしれません。

女性差別は公然の秘密だった

 この問題が発覚してから、私も都内の有名伝統校出身の医師から「私の大学でも、医学部入試で女性差別をしているのは公然の秘密だった」と聞きました。どうやら、医学部入試に問題があるのは、東京医大だけではなさそうです。

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 報道されている通り、医療界ではかねてから女性医師が増えることを懸念する声がありました。女性医師は結婚、出産、育児を契機に、いったん職場から離れることが多いため、臨床現場では「戦力になりにくい」と見られてきたからです。

©共同通信社

 当直や休日出勤、緊急の呼び出しなどがあり、長時間労働を強いられる外科、救急などの診療科は敬遠され、いまも医師不足に喘いでいます。一方、女性医師の多くが皮膚科、眼科、麻酔科、病理科など、残業が少なく仕事と家庭生活のバランスがとりやすい診療科に流れると言われてきました。

 こうしたことから、医学部入試で女性を抑制することは「必要悪」と考える人が出てくるのも、不思議ではないと思います。また、そもそも私立大学ですから、どんな基準でどんな人を入れるかは、経営者の裁量とも言えます。「東京男子医科大学にすればいい」という意見が出てくるのも、わからないではありません。

医師の数を制限する国家主導のシステムとは

 しかし、現行のシステムをとる限り、私はやはり医学部入試で女性差別はあってはならないと考えます。それは、医学部の入学定員が文部科学省によって厳格にコントロールされているからです。

 文科省によって決められた2018年度の医学部の定員総数は9419人でした。一方、医師国家試験(国試)の合格率はずっと9割前後で、2018年度の合格者数は9024人でした。つまり、事実上「医学部に入れるかどうか」で「医師になれるかどうか」が決まるシステムになっているのです。

 たとえば、法科大学院に入っても、司法試験に合格できるのは4人~5人に1人ほどです(2017年度の合格率は22.51%)。しかし、医学部は潜り込みさえすれば、9割の人は医師になれます。だからこそ、お金を積んだりコネを使ったりしてでも、「我が子を医学部に入れたい」という動機が働くのでしょう。

 医学部に入っても、4人に1人しか国試に受からないなら、入試に多少の裁量があっても文句は出にくいと思います。しかし、入試の時点で医師になれるかどうかの選別をしているわけですから、そこで差別やえこひいきが行われるのはやはり大問題です。