文春オンライン

東京医大の“女子合格抑制”が「必要悪」であるはずがない3つの理由

全国医学部長病院長会議が「差別」と「コネ」入試の実態公表を

2018/08/06
note

税金を男性にだけ手厚く配分していることになる

 しかも、医学部には多額の補助金が投入されています。東京医大にも、税金を原資とする「私立大学等経常費補助金」が毎年約20億円も払われています。それだけでなく、同大は皮肉なことに、女子合格者を制限していた2013年に、女性の活躍を支援する国の事業に選ばれ、3年間で8000万円を超える補助金を受けていました。これだけの税金が投入されているにもかかわらず、入試で女性差別をしているということは、何の説明もなしに税金を男性だけに手厚く配分しているのと同じです。こんな不公平はありません。

女性医師の方が患者死亡率が低い?

 それに、医療において「女性医師は戦力になりにくい」という考えは、もはや時代錯誤だと私は思います。2016年に発表された、こんな論文があります。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)助教授の津川友介医師が、米国のおよそ130万人の高齢入院患者のデータを解析したところ、「女性医師のほうが男性医師よりも患者の死亡率や再入院率が低い」ことが明らかになったというのです。

©iStock.com

 その理由を、津川医師はこう解説しています。「なぜ女性医師の方が患者の予後が良いのかについて本研究では明らかにすることができなかったものの、過去の研究において、女性医師の方がガイドライン遵守率が高く、患者とより良好なコミュニケーションを取り、より専門家にコンサルテーションすることなどが報告されています。このように男性医師と女性医師の間での診療パターンの違いが、患者の予後の差につながった可能性があるのではないかと考えられます」(津川友介医師ブログ「医療政策学×医療経済学」)。

ADVERTISEMENT

 津川医師はこの研究について、「女性医師が給与や昇進で不利益を被るような性別格差が縮むといい」ともコメントしています(毎日新聞「女性医師 男性より優秀 世界に影響論文 津川氏世界3位」2017年12月25日付)。逆に言えば、医療界ではいまだ、女性医師が給与や昇進で不利益を被る構造があり、その能力を存分に発揮できていない現実があるということでしょう。