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東京医大の“女子合格抑制”が「必要悪」であるはずがない3つの理由

全国医学部長病院長会議が「差別」と「コネ」入試の実態公表を

2018/08/06
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腹腔鏡手術やロボット手術――女性が活躍できる手術が増えていく

 また、筆者は最前線の男性外科医から、こんな話も聞いたことがあります。近年、手術の現場では、おなかを切り開かずに細長いカメラや器具を挿入し、モニターを見ながら操作をする腹腔鏡手術やロボット手術が普及しています。これらの手術は、かつてのように体力勝負というより、繊細な操作やきめ細やかな配慮が必要で、「これからの手術はむしろ女性医師が活躍できる余地がいくらでもある」と言うのです。

©iStock.com

 そもそも、患者の半数は女性であり、女性特有の病気では同性のほうが話しやすいという人も少なくありません。労働者としての医療者の立場から見ると、「女性医師が増えるのは困る」のかもしれませんが、患者から見れば逆にウェルカムな面も多いはずなのです。

「女性医師が戦力になりにくい」のは労働環境の問題だ

 もし女性医師が「戦力になりにくい」のだとしたら、それはむしろ現在の医療機関の労働環境のほうに問題があります。過酷な診療科を避けたいと思っているのは、女性医師だけではありません。多くの男性の勤務医たちも、人手不足の医療現場で長時間労働を強いられています。女性医師の能力を存分に発揮してもらうためには、男女問わず仕事と家庭生活を両立できるような労働環境に変えていくことこそが重要なはずです。 

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 どうすれば労働環境をよくできるのか、そこに知恵を絞らねばならないはずなのに、手っ取り早く女性を排除することで問題解決を図ろうとするなんて言語道断です。女性差別だけではありません、他の大学医学部の教授からは、「うちの大学でも、OBの子弟は入試で優遇されている」と聞きました。女性差別だけでなく、コネ入試も横行している可能性があるのです。

全国の医学部入試の実態公表を

 もう、ここまで実態が曝露されてきたのですから、「全国医学部長病院長会議」が率先して、全国の医学部入試でどんな差別やコネ入試が行われているのか、すべてつまびらかにしてはどうでしょうか。

 同会議は全国の大学病院と医学部の責任者の集まりです。真実を知らないはずはありません。もし「女子学生数を抑制するのは仕方ない」とか「私立なのだから誰を入れても構わないはず」と開き直るなら、ぜひ率先して医学部入試の実態を公にし、世に問うて欲しいと思います。

東京医大の“女子合格抑制”が「必要悪」であるはずがない3つの理由

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