泣きながら仕事をしていた20代
2016年、『とと姉ちゃん』のヒロインに抜擢される。2564人から選ばれた24歳、『ごちそうさん』から3年、朝ドラ2作目にして初の連続ドラマ主演だった。業界での評価は着実に高まっていた。再放送にあたり「9年も経ったの?!」と時の流れに驚きつつ、「嬉しい! という気持ちと、恥ずかしい、見ないでっ! という気持ちが正直半分半分です(笑)」とコメントを寄せている(※2)。
だが、華やかに見えた20代は「泣くほど忙しい」日々の連続だった。友人との約束を3回ドタキャンせざるを得ず泣いたこともあったという。『婦人公論』のインタビューでも「20代の間は息をつく暇もないくらい働いた」と振り返り、毎日仕事が4時間押した週もあったと明かしている(※3)。
一方で、この時期に高畑は俳優としての評価を確立していった。滑舌の良さに加え、耳が良いためか、観ている者が求める声を場面場面で出せる。遊川和彦脚本の『過保護のカホコ』(2017年/日本テレビ系)では、世間知らずで純朴、思ったことをそのまま言ってしまう主人公・加穂子を演じ、その浮いた強烈な存在感で視聴者を魅了した。民放初主演作となり「コンフィデンスアワード・ドラマ賞主演女優賞」を受賞。『ねとらぼ』が実施した高畑充希の出演ドラマ人気ランキングでは『同期のサクラ』(日本テレビ系)や『忘却のサチコ』(テレビ東京系)を凌いで1位を獲得している(※4)。
2019年の『同期のサクラ』では、『過保護のカホコ』の制作チームが再集結。高畑は忖度できない主人公・サクラを演じた。「まずい、ひじょーにマズい!」と慌てて走り出すシーン、納得がいかないと「スゥ~~」と息を吸う癖、「私には夢があります」から始まる真っ直ぐな宣言――クセの強いキャラクターに現実味を持たせた「生っぽさ」で、「高畑にしか演じられない」と評された。本人も「変な人三部作」と呼ぶこれらの作品で、唯一無二の俳優像が形成されていった。
舞台での評価も高い。舞台『奇跡の人』を観劇した映画監督の三木孝浩は「ナチュラルボーン女優」と絶賛。演出を手掛けた森新太郎も、高畑の演技には常に勇気があると驚かされたエピソードを明かしている。
2021年にはミュージカル『ウェイトレス』日本初演で主演を務め、菊田一夫演劇賞を受賞した。パワフルでありながら歌詞が聞き取りやすい歌唱力は、舞台で培った滑舌の良さが発揮されている証だろう。共演した森崎ウィンは、高畑の「唯一無二の歌声」に心が震えたと語っている。
