2025年5月から12月にかけて再放送されていたNHK朝ドラ『とと姉ちゃん』が最終回を迎えた。2016年の本放送から9年、主演を務めた高畑充希は34歳となり、俳優としても私生活においても充実した新たなステージに立っている。
2024年11月、俳優の岡田将生との結婚を発表。2025年7月には第1子妊娠も公表した。同年6月公開の映画『国宝』は興行収入173億円超えで邦画実写歴代1位を22年ぶりに更新、10月公開の『秒速5センチメートル』では松村北斗とのW主演が話題を呼んでいる。2025年にはデビュー20周年を迎え、節目の年となる。仕事も私生活も絶好調――だが、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。
9621人から選ばれたシンデレラガール
1991年、大阪府東大阪市に生まれた高畑充希。会社経営の父と母、祖父母の5人家族の1人っ子として育った。舞台鑑賞が好きな両親の影響で、幼い頃から『オペラ座の怪人』や蜷川幸雄作品に親しんだ。同級生がアイドルやJポップを聴く中、高畑は『レ・ミゼラブル』などミュージカルのサウンドトラックを好んで聴き、いつか舞台に立つことを夢見ていたという。
小学生の頃から舞台女優を志し、オーディションに挑戦するも落選続き。「受からなかったら早稲田大学の演劇研究会へ」と、小学校低学年から塾に通って猛勉強し、四天王寺中学校へと進学した。中学時代は軽音部でボーカルを担当し、全国の中高軽音楽部によるコンテスト「スニーカーエイジ」のグランプリ大会にも出場している。
転機は2005年、13歳の時に訪れた。ホリプロ主催の山口百恵トリビュートミュージカル『プレイバック part2 ~屋上の天使』のオーディションで、9621人の応募者の中からグランプリを獲得したのだ。長年の夢が、ついに叶った瞬間だった。
初代ピーターパンを務めた榊原郁恵は、高畑の歌のうまさと感受性の鋭さ、表情の豊かさを絶賛。「素がピーターパンみたいにヤンチャ」と評し、その推薦で高畑は2007年、15歳で8代目ピーターパンに就任した。以後6年間、歌もダンスもフライングもある過酷な舞台を務め上げた。体力的には辛かったが、先輩たちが無事に卒業していったのを励みにしていたという。2015年の会見では「男の子を6年やったら、オジサンみたいになってしまって」と笑いを誘っている(※1)。
2013年、朝ドラ『ごちそうさん』でヒロイン・め以子(杏)の義妹・西門希子役に抜擢される。実は、劇中で高畑が歌うシーンは当初の脚本になかった。脚本家の森下佳子がミュージカル『スウィーニー・トッド』を観劇し、その歌声に惚れ込んで当て書きで追加したのだ。高畑自身も後にこのエピソードを振り返っている。
劇中歌『焼氷有りマスの唄』は大反響を呼んだ。ミュージカル経験は豊富だったにもかかわらず、「ミュージカルをやっている人」という認知度がなかったことを実感し、より一層励みになったという。
映画監督の福田雄一は「これから絶対に来る女優」と太鼓判を押し、自身が監督を手掛けた『女子ーズ』に高畑を抜擢。女優の黒木瞳も歌声の力強さと清らかさを絶賛し、「ミュージカル界を背負っていかれる逸材」と評している。
