坂本欣弘監督とは、『もみの家』(20年)という作品で初めてお会いしました。その撮影の最中に「次の作品を作る時には是非参加してほしい」と言っていただいたんです。
『もみの家』が仕上がった頃は、ちょうどコロナ禍の真っ只中で、上映の機会と緊急事態宣言が重なってしまい、監督が苦しい思いをされているのを見ていました。心配になって「どうしてる?」と連絡を取ったりしていたのですが、そこからまた先を目指したいということで、『無明の橋』のお話をいただきました。
「渡辺とやりたい」と言ってくれた人を信じることにしています
企画の内容を詳しくお聞きする前から、「布橋灌頂会」については伺っていました。もともと坂本監督が「布橋灌頂会」のドキュメンタリー映像を撮っていて、それを見て、すごく美しい儀式だと感じていたんです。
私が興味を持ったのは、儀式における「擬死再生」というテーマです。一度死のようなものを擬似体験して、新たに生き直す。そんな発想が自分の中にあるだけで、「明日も生きていけるかもしれない」と思えるじゃないですか。
最初に脚本を読ませていただいた時は、行間の多い本だな、という印象を持ちました。どんな脚本をいただいた時でも、あまり感想を持たないようにしているんです。自分でイメージを作り込みすぎてしまうと、現場で違うことが起こった時に対応できなくなるかもしれない。だから、脚本を読んでもなるべく真っ白なままでいるようにしています。
好みで判断し始めると、働きたくなくなってしまいますからね(笑)。私は「渡辺とやりたい」と言ってくれた人を信じる、と決めているんです。役作りというより、どうしたらこの本を書いた人や、これを作りたいと思った人の感性に一番近いものになれるかな、と考えることが多いですね。

