メイキング映像を見ると、カメラが回っている真横で、スタッフたちが弁当を広げて食べているのがわかる。まさに休憩時間そのものだ。
主役が食べてくれないのなら、休憩時間にしてしまう。そしてなごんだところで、そっとカメラを回す。
「こうなったらいい」というベスト、「それができなかったらどうするべきか」の逆ベスト。できれば、さらにもうひとつくらいを考えておく。
準備で重要なのは、選択肢を2つ、多くてもせいぜい3つに絞ることである。
「準備しすぎる人」が見落としていること
よくあるのは、選択肢を用意しすぎてしまうことだ。
たとえば10パターンも20パターンも用意してきたとしたら、それはもはや準備とは言わない。前項でも触れたように、「第2プラン」は第1プランの劣化版で、「第3プラン」はさらにその劣化版……ということが少なくない。
そういう人は、いざ雨が降ったとき、用意してきた別パターンが多すぎて、即断することができず、何を撮ったらいいかわからなくなってしまう。
ひとつダメなら、残り9つの中から選ばなければならない。雨はどんどん強さを増すのに、そんなことをしていたら、撮影が間に合わない。
現場でときどき見かけるのは、「あれ? こんなに準備してきたのに、なんで私はできないんだろう」という人だ。
企画の段階なら、できるだけたくさんの選択肢を用意するのもいい。だが実践の場では、いろいろな選択肢を試している余裕はない。
もし「2つに絞れない」なら、選択肢を出し切れていない。または、まだ絞れていない証拠だ。
考えすぎた可能性のほとんどは、実際には起こらない。プランは絞っておくほうが、臨機応変に動ける。
映画監督、脚本家
1979年、群馬県生まれ。映画監督、脚本家。2003年、『Summer Nude』で劇場デビュー。撮影時22歳、公開時24歳という若さが反響を呼ぶ。以降、『荒川アンダー ザ ブリッジ』(原作:中村光)、『虹色デイズ』(原作:水野美波)、『野球部に花束を』(原作:クロマツテツロウ)といった漫画の映像化から、『笑う招き猫』(原作:山本幸久)、『噂の女』(原作:奥田英朗)、『ステップ』(原作:重松清)、『ある閉ざされた雪の山荘で』(原作:東野圭吾)といった小説の映像化に加え、『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』『宇宙人のあいつ』『FUNNY BUNNY』『REPLAY & DESTROY』『榎田貿易堂』といったオリジナル作品まで、多岐に渡るジャンルの作品を手がける。
