2009年に公開された『アバター』は、映画業界に大変革を巻き起こした。誰も見たことのない映像の美しさに「これからは3Dの時代だ!」と、多くのスタジオが公開を控える新作をこぞって3Dに変換。映画館のオープンが相次いでいた中国では、3Dではないスクリーンがほぼないような状況になった。

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 そのブームは長続きしなかったが、『アバター』の人気は衰えることはなかった。2022年公開の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』も、全世界で23億ドルを売り上げる爆発的ヒットに。それは、ジェームズ・キャメロンが一から作り上げた世界と、そこで起きる物語がとてつもなく優れているからにほかならない。3Dは、あくまでそのストーリーをより効果的に語る手段なのである。

シリーズの奥にある残酷なテーマ

「このシリーズは、全世界で受け入れられてきた。アメリカでも、日本でも、ヨーロッパでも。伝統に対する義務、あるいは伝統を打ち破ること、社会、人とのつながりといった、私たちにとって大事なことを語るから。そもそも、主人公は異人種カップルだ。ジェイクは人間に生まれ、ネイティリは生粋のナヴィとして伝統的な育てられ方をした。子どもたちは、指の本数が普通と違っていたりする。自分が世間と馴染めないと感じている子もいる。そこにも多くの人は共感できるのではないかな」(キャメロン)

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『ウェイ・オブ・ウォーター』では、ジェイク・サリー(サム・ワーシントン)とネイティリ(ゾーイ・サルダナ)の5人の子どもが初登場した。実の子は3人。あとのふたり、キリは1作目で死んだグレイス博士(シガーニー・ウィーバー)の娘、スパイダーはパンドラに取り残された人間の子。3作目『ファイヤー・アンド・アッシュ』では、2作目以上に、これらの子どもたちの個性とストーリーにおける存在意義が明確になる。これは、戦いの中にぶちこまれ、責任を負わされる彼らの成長物語でもあるのだ。

左からスティーヴン・ラング、シガーニー・ウィーバー、ふたりおいてゾーイ・サルダナ、サム・ワーシントン(2022年撮影) ©︎AFP=時事

 悪役クオリッチ大佐を演じるスティーヴン・ラングも「子どもが戦うことを強いられるというのも、このシリーズの奥にある要素のひとつだと思う」と言う。それは、現実の世界で起きていることだ。カメラの回らないところでも子役たちの母のような存在だったというサルダナも、「2作目と3作目を撮り終えた今、戦争の中で生き抜こうとしている家族に、より強く、深いレベルの思いやりを感じるようになったわ。私はいつもその人たちのことを思っている」と真摯に語る。