事務所のトイレに行ってみると……

 事務所のトイレが工事現場用の簡易トイレだった。スペースが狭く、便座に腰掛けるには蟹股にならないといけない。照明は切れていて、ボックスの中は真っ暗。ドアはカギが壊れていて閉まらない。もちろん尻洗浄機は付いていない。男衆中心の清掃業の職場ではこれがスタンダードなのだろうか。

 雨合羽のズボンを下ろし、ユニフォームのズボンを下ろし、パンツを下ろして腰掛け、ドアが開かないように片手で押さえ、すき間からもれる光を頼りに大小をした。トイレットペーパーはかろうじてあった。

事務所には簡易トイレしかなかった。なかなか労働環境としては厳しいものがある ©monterosportsjp/イメージマート

いよいよ出発!

 さあ、出発だ! 自分が割り当てられた清掃車へ向かう。75号車だった。ボディにでっかく「75」と書かれていた。

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「おはようございます!」

 ペアを組んでくれるドライバーのサトウさん(仮名・以下同)に、努めて大きな声で挨拶する。

 サトウさんはたぶん同世代だろう。俳優の原田芳雄に少し似ている。彫りの深いワイルド系の顔だ。年上か年下かはわからない。ただし、この場では間違いなく先輩だ。すべてペアを組む人の指示には全部素直にしたがうと決めてやって来た。

「日雇いで来ました。今日1日、よろしくお願いします!」

 ビシッと挨拶した。10代のころ運動部にいたので、先輩に対して礼儀正しく接することは身体に沁みついている。

「今日1日、よろしく」

 サトウさんは笑顔を返してくれた。清掃車は会社の敷地を出ると、市街地に向かって走っていく。午前はターミナル駅周辺のゴミを集めるらしい。