「人生100年時代」ともいわれる一方で年金制度の先行きが危ぶまれる昨今、60歳や65歳での「リタイヤ」はもはや許されず、生涯働き続けることも視野に入れる必要がある。しかし、老境に入って体力が衰えていても従事できる仕事には、どんなものがあるのだろうか?

 これまでフリーライターとして活動してきた神舘和典さんが、60歳を超えて「人生で初めての就職活動」を行い、さまざまな職業を体験したルポ『60歳からのハローワーク』(飛鳥新社)から「ゴミ収集」のエピソードを抜粋してお届けする。(全3回の1回目/続きを読む)

63歳で「人生初の就活」→日雇いゴミ収集員になった男性の記録 ©tyak_factory/イメージマート

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1日7時間半、家から家へと駆けまわる

 こんなに駆けたのはいつ以来だろう。家から家へ。ゴミ収集ボックスからゴミ収集ボックスへ。小雨降るなか、ヒーヒー言いながら、走りに走った。

 今の自分がどのくらい働けるのか知りたくて、ゴミ収集の会社の日雇い枠に応募したら採用してもらえた。拘束時間は8時間半。実働時間は7時間半。休憩が1時間。清掃車(ゴミ収集車)に乗り降りすること約100回。1日にこんなに連続してクルマを乗り降りした経験はない。

 身体が熱い。額に浮いてきた汗がやがて流れだし、Tシャツが湿って身体に張り付いた。大変な仕事を選んでしまった。

 63歳で職探しを始め、人手不足が深刻な路線バスやタクシー会社の面接を受けた。しかし、自分には難しいと感じた。理由はいくつかある。なかでももっとも大きな1つはトイレ事情だ。頻尿でお腹が緩い自分が運転中に尿意や便意に襲われたらアウトだ。その不安を払拭できなかった。

 年齢とともに尿意の頻度は増している。2年くらい前までは夜間睡眠中にトイレで起きるのはひと晩に1度だった。ところが、いつのまにか2度3度になった。歳をとると人は忙しくなる。

 路線バスの会社でも、タクシー会社でも、トライすることを強く勧めてくれた。しかし、技術的・体力的に自分にできるとは思えなかった。職を得ても、どのくらい身体に負荷がかかるのか、リアルにはわからない。そもそも自分の体力や忍耐力もわからない。そこで、職業体験をしなくてはいけないと強く感じた。

 実際にやれば、苦しさも、もしかしたら楽しさも、身体で知ることができる。そこで応募したのがゴミ収集作業員だった。清掃車の助手席に乗り、ゴミを集めて積み、処理場に運ぶ“ヨコ乗り”と言われている仕事だ。