60歳を超えて人生初の就職活動、日雇いでゴミ収集員になった男性を待っていたのは、1日7時間半にわたって家から家へと駆けずり回るハードな仕事だった――。
人生100年時代ともいわれる一方、年金制度の先行きが危ぶまれる昨今、60歳や65歳での「リタイヤ」はもはや許されない。私たちは定年退職を迎えた後も、生涯にわたって働く必要がある時代に突入している。とはいえ、老境に入って体力が衰えていても従事できる仕事には、どんなものがあるのだろうか?
これまでフリーライターとして活動してきた神舘和典さんが、60歳を超えて「人生で初めての就職活動」を行い、さまざまな職業を体験したルポ『60歳からのハローワーク』(飛鳥新社)から「日雇いゴミ収集員」として働いてみた際のエピソードを抜粋してお届けする。(全3回の2回目/続きを読む)
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50~60代だけでなく、女性も多い職場
ゴミ収集会社までは、早朝にガラガラの高速をクルマで走って1時間強。7時30分くらいに着くと、敷地内に何十台もの青い清掃車がすき間なく停められていた。よくもこれほどびっしりときれいに駐車できたものだ。運転技術の高さに驚かされた。停まっているのはほとんどが日野の2トン車だ。
清掃車、つまりゴミの収集に使われている特種用途自動車は、パッカー車という。正式名称は「塵芥(じんかい)車」。作業員が後部のコンテナにゴミを投入すると、内部で圧縮。たくさんの量を積み込める。
事務所を訪ねると、会社のロゴが刺繡された青いユニフォーム、滑り止め付きのゴム手袋、キャップ、雨合羽を貸与された。更衣室で着替えて外に出ると、朝礼が始まった。清掃車は左後方が見えづらいらしく、巻き込み事故を起こさないように厳重に注意される。ヨコ乗り作業員は常にドライバーをサポートすることが徹底された。
朝礼中に周囲を見回すと、50~60代あたりがかなりいる。ほっとした。女性も3人見かけた。外国人が1人いた。欧米系だ。
出発前に、トイレには行っておきたかった。移動中に尿意や便意に襲われるのが怖い。しかし朝礼の後近くにいた社員さんにトイレの場所を聞くと、彼は表情を曇らせた。
「トイレは事務所の1階です。でも、あとでコンビニへ寄ったほうがいいですよ」
コンビニのトイレを勧めるにはなにか理由がありそうだ。でも、出発前に大小しておきたい。それを言うと、しぶしぶ連れて行ってくれた。そこで、しぶしぶの理由がわかった。
