人生100年時代ともいわれる一方、年金制度の先行きが危ぶまれる昨今、60歳や65歳での「リタイヤ」はもはや許されない。私たちは定年退職を迎えた後も、生涯にわたって働く必要がある時代に突入している。
とはいえ、老境に入って体力が衰えていても従事できる仕事には、どんなものがあるのだろうか? これまでフリーライターとして活動してきた神舘和典さんが、60歳を超えてさまざまな仕事の世界に飛び込んだルポをまとめた書籍『60歳からのハローワーク』(飛鳥新社)から、大阪・難波のラブホテルで働いたあとに神戸・三宮で神舘さんが出会った70代男性の例をお届けする。(全4回の4回目/最初から読む)
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ラブホ清掃員が「排泄物」よりも困るもの
別の日に、今度は神戸のラブホテルで働かせてもらった。兵庫県、神戸の中心街、三宮の南側に広がる異人館街は女性グループやカップルの旅行者が多いエリア。洗練されているからだろう。
その緩やかな坂を上り路地に入ったところに、周囲の環境とは趣きを異にするホテルがあった。客室は15ほど。難波とは違い昭和の香りのする古典的な連れ込みホテルだ。
バックヤードを訪ねると、難波のホテルよりもこぢんまりしていた。従業員数はフロント嬢を含めて5人。難波と同じチェーンで、こちらもオクムラさんが店長を務めている。難波は約50室あったので、3人のチームを3つ編成。お客さんが帰り空室になると、無線で連絡を取り合い手分けして次々と掃除をしてセットアップしていった。しかしサイズが小さい三宮のこのホテルは、3人ですべての部屋を担当する。
「今日はずっとバスルームの掃除をやってください」
オクムラ店長から指示を受けた。
