名門私立の上智大学を卒業し、一流企業や有名ベンチャーから内定を得るも、その安定した道を自ら捨てた。現在、アイドルグループ「PinkySpice」のメンバーとして活動する美波海音さん(24)は、「何者かになれるのか」という思いから未知の道に挑戦した。そこには、心配する母親の反対を押し切るほどの強い意思があった。

美波海音さん ©佐藤亘/文藝春秋

「なんで安定した道があるのに、わざわざ不安定な道へ行くの」

 美波さんが所属するアイドルグループ「PinkySpice」のオーディションに合格したのは、大学3年生だった2023年2月のこと。一流企業や有名ベンチャーからの内定も持っていた彼女は、就職という安定した道を捨てる選択をした。しかし、これまで美波さんのやりたいことを止めることのなかった母親からも反対された。

「実は、母にアイドルをやっていると話したのは、オーディション合格後に事務所と正式契約を結ぶタイミングだったんです」と美波さんは明かす。

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 親の同意が必要だったため、仕方なく打ち明けると、母親は涙ながらに「なんで安定した道があるのに、わざわざ不安定な道へ行くの」と言ったという。

「でも、幼い頃から『お金は消えてしまうけど、経験は自分に残る』と言っていたのは母ですし『若いうちから何でもやりなさいと言ってたのはそっちじゃん!』と、私も言い返して」と、当時のやりとりを振り返る美波さん。彼女にとってはアイドルも進路の1つであり、最後は自分の意思を貫いた。

©佐藤亘/文藝春秋

母親の反対を押し切ってまでアイドルになりたかった理由

 母親の反対を押し切ってまでアイドルを選んだ背景には、「何者か」になりたいという思いがあった。「英語や中国語を学び、国際協力の活動を続けて、大学合格後にアイドルのコピーダンスサークルに入ったのもすべて、自分の意思で決めてきたことではあったんですけど、ある程度、結果を想像できるものではあったんです」と説明する。

 しかし、プロのアイドルだけは「できるかどうか分からない」と思える未知の分野だった。「自分は『何者か』になれるのか」をみずから試そうと思ったという。

 大学卒業後はアイドル1本となり「もう補助輪はない」と感じるようになったという美波さん。「大学生活と並行してアイドル活動をしているときは、どこか、安全地帯にいる感覚だったんです。でも卒業後は、自分の選択への責任感をより強く持てるようになりました」と語る。

©佐藤亘/文藝春秋

「私にとって一番の熱心なマネージャーさんです」現在は母親もアイドル活動を応援

 現在は母親も応援してくれるようになり、ライブにも足を運んでくれるという。「招待したZepp Shinjuku(TOKYO)公演で『プロのアイドルって、こういうことなのね』と認めてくれて、今ではライブに来てくれるようになりました」と嬉しそうに話す。

 最近では、ステージの動画を見て「このときの表情がよかった」とフィードバックをくれるようになったとのこと。「私にとって一番の熱心なマネージャーさんです」と母親への愛情を語った。

「たくさんのステージに立てる日常が幸せで、毎日が充実しているし、後悔はありません」と語る美波さん。「アイドルとしての私だけでなく、過去の私も含めて"美波海音"なので、どちらもずっと大切にしたいです」と、これからも自分の道を力強く進んでいく決意を示した。

 

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