「彼女を深く愛していた」──その歪んだ恋心が、15歳の少年を殺人者に変えた。美しすぎる高校教師に誘惑され、不倫関係に溺れた少年は、彼女の一言で夫殺しを決意する。平成2年に起きた事件のはじまりを、文庫『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目/続きを読む

写真は同事件をもとにした映画「誘う女」主演のニコール・キッドマン ©getty

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生徒を誘惑して「夫を殺害」

 1995年、「誘う女」という映画が公開された。天気番組の女性キャスターが自分の夢に理解を示さない夫を邪魔に感じ、ウブな高校生を色仕掛けで誘惑したうえで殺害を指示、実行するサスペンススリラーだ。ニコール・キッドマンがその大胆な演技でゴールデングローブ賞(主演女優賞)を受賞した同作は、実際の出来事に基づいている。

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 1990年に高校教師のパメラ・スマートが、自分に夢中な男子高校生ビリー・フリンに指示し、結婚生活1年も経たない夫のグレッグを殺させたスキャンダラスな事件。本件は全米の注目を集め、裁判がテレビで生中継されるほどだった。

 1990年5月1日夜、ニューハンプシャー州デリーの住宅で女性の絶叫が響き渡った。近隣住民からの通報を受けた警察が現場に駆けつけると、そこには頭を銃弾で撃ち抜かれた家の主、グレッグ・スマート(当時24歳)の姿が。

 その傍らで、妻パメラ(同22歳)が夫の遺体に泣きすがっていた。2人は翌週に結婚1周年を迎えるはずだった新婚夫婦。突然、襲った悲劇は大いに周囲の同情を買った。