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極めて正直に、率直に
そんな師走のある日、新宿の紀伊國屋ホールに演劇を観に行ったついでに、書店での売り場が見たくなって、3階ビジネス書のフロアに寄ってみた。すると、遠目にもわかるほど『勝負眼』がずらりと並んでいる。おそるおそる近づいてみると、自分の顔がドアップになった大量の本が威圧感たっぷりにこっちを見ている。表紙の自分と目が合って、思わず後ずさりし、そのまま回れ右して逃げ出すようにその場を離れてしまった。
なぜか。もちろん、著者の顔が並んでいる場所に本人がいることを他の客に見られたくない気持ちもあった。でもそれ以上に、自分の内面を曝け出したものが陳列されているのを目の当たりにし、なんだか素っ裸で外に放り出されたような気恥ずかしさを感じたのだ。
この本を書く時(つまりこの連載を書く時)、自分は極めて正直に、率直に書いていると思う。
毎週やってくる原稿の締め切りは恐怖で、そもそも自分を絞り出すように書いていかないと、余裕がない。それに、私みたいな社長が本音を伏せて建前みたいなのを並べて書いてたら面白くもなんともないだろう。
だから、無意識のうちにこの『勝負眼』に内面を全て曝け出してる気がして、「読んだよ」と言われると、嬉しい反面、気恥ずかしさを覚えるのだ。でも考えてみると、今ではすっかり無意識にやってるけど、「率直に言う」というのは、創業来、普段から最も心がけていたことだった。
