バレバレにするメディア
インターネットの普及と時を同じくして社長になった私は、当時から時代の変わり目を感じていた。
それ以前は、「社長は偉い人」というのは世の中で通念とされてたし、実際、自分が特別な人間のように大上段から語る社長や、綺麗ごとばかり言う社長が多かった印象がある。
ところが、インターネットがそれを許さなくなった。綺麗ごとばかり言っていても、実態が違えば、社内から社外からそれが漏れてくる。偉そうにしていても、偉くないことはすぐバレるし、賢そうに振る舞っても、ネットを通じて頭の程度はすぐバレる。つまり、新たに登場したインターネットは社長をバレバレにするメディアだったのだ。
若くして社長になった私は、それに気づき、自分を大きく見せようとか、賢そうに振る舞おうとするのをやめた。四苦八苦しながら会社を立ち上げる様をネットに書き綴ったりして、等身大であり、身の丈を伝えた方が、むしろ社内外に対して共感と信頼が得られ、仕事がやりやすいことを経験の中で学んでいったのだ。
でも、会社が大きくなるにつれて、綺麗ごとが求められる機会も増えてきた。イチ企業の社長というより政治家のように社会全体を良くするような発言を期待される。普段から率直であることを心がけて生きていると、なんかしっくりこないなと思っていた矢先、エイベックスの松浦勝人さん(現会長)の言葉を聞いてハッとした。「(インタビューで)若い起業家を励ますメッセージをくださいって言われるんだよ。ねぇよ!」と。
なんて正直なんだろう。私も何度、同じことを聞かれただろうか。でも、いつも違和感を抱いていた。同じ立場だから言わせてもらうと、若手起業家なんて生意気で恩知らずなやつも多いし、競合に育つ可能性もあるのに、なんで励まさないといけないんだろう。自分の言葉としても嘘くさい。投資先なら全力で励ますし、応援する。それが普通のことであって、本音だと思う。
自分の会社が儲かったら嬉しいし、損したら悔しい。自分の本を出して売れたら、もちろん嬉しい。言わなくて良いことをわざわざ言う必要はないけど、建前や綺麗ごとで誤魔化して、嘘くさい話をする社長にはなりたくない。
もう会長になったけど、今後も率直に、ありのままをここに綴っていこうと思っている。
(ふじたすすむ 1973年福井県鯖江市生まれ。97年に青山学院大学を卒業。98年にサイバーエージェントを創業し、2000年には史上最年少社長(当時)として東証マザーズに上場。現在はインターネット広告やゲーム、メディアなど多角的に事業を展開。25年12月、会長に就任。)
