息子も歌舞伎の魅力にロックオンされたんでしょう

 一方で、13歳になった長男の尾上眞秀は歌舞伎役者のみならず、映像の仕事にも出演し、順調にキャリアを積み上げている。

「2歳の頃に歌舞伎座に連れて行ったら、『帰りたくない』って言って、じっと昼夜通しで歌舞伎を見てました。ちょっと変わってるけど貴重だなと思いました。私が子どもの頃に楽屋に連れて行ってもらったら、真っ白い化粧をして男なのか女なのか分からない人たちが歩いていて、怪しげな空間に入ったみたいだったんです。客席に回って舞台を見ると、音はすごく大きいし、極彩色の世界で美しい。怪しいものとディズニーランドがないまぜになったような不思議な世界。もう、ロックオンされちゃったです。だから、眞秀も歌舞伎の魅力にロックオンされちゃったんでしょう」

 一人前の歌舞伎役者になるためには、無限に稽古が続き、家族の協力も欠かせない。

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「甘えん坊ですし、私に頼り切っているところはありますね。そろそろ、自分の予定は自分で把握して欲しいとも思います。でも、稽古は自分ひとりで行けるようになったし、着物も自分で着られるようになって、それは成長だと思うんです。母親としては自分が生きている限りは、『お母さんはこう思うよ』とか、自分が考えていることは伝えた方がいいんじゃないかと思っています。それで、最終的には眞秀のas you like、最後は自分の好きな通りに生きるというのが理想だと考えています」

自分を見ているような気がして疲労困憊

 息子は歌舞伎座の舞台にも立つし、映画にも出る。一方で、普通の学校生活も大切にしている。それは寺島しのぶが役者ではなく、普通の母親になる時間を意味する。

「彼は学校も、友だちも好きだし、部活もやっています。そういう面は尊重してあげたい。スポーツは小学校の時はサッカーから始まって、野球も一生懸命やっていました。今はバレーボール。でも、バレーの応援って、難しいんです。野球は外だから大声で応援しても目立たないんだけど、バレーで同じ声量で喋っていると、体育館だと目立ってしまうので応援方法は探究中です」

 眞秀は私に似ているところがある、と寺島しのぶは話す。

「眞秀は私に似て、ひとつのことに集中しちゃうと、全体が見えなくなってしまうタイプ。旦那に似ていたらちょっと違う方向に行っていたかもしれないけど、なんかもう自分を見ているようなんです」

 息子の歌舞伎の舞台を見ると、そんな思いが加速してしまう。