静岡県の鈴木康友知事は「国は外国人を労働者としか見ていないが、地方自治体は生活者として受け入れている。そのことを認識すべきだ」と話した。ところがである。取りまとめ役となった静岡県には「外国人が増えれば犯罪が増加する」などの批判的な意見が殺到したのだ。曲解した人々が自治体にクレームを入れたのだという。議論が成立しない状況に、言葉を失った。

 だが全国知事会は毅然としていた。11月も「多文化共生の推進」を訴えた。「事実やデータに基づかない情報による排他主義・排外主義を強く否定します」と宣言。「感覚的に論じることなく、現実的な根拠と具体的な対策に基づく冷静な議論」を進めるとした。

 悪意に負けない姿勢を、はっきりと示した。地方にとっては外国人との共生は切実なのだ。

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 信濃毎日新聞の社説は、ここ最近は事実に基づかない「外国人問題」が叫ばれていることを指摘し、「そうした風潮に乗じ、伝聞や個人的な感想を、さも重大事であるかのように語る政治家の姿が目に余る」と問うていた(「知事会の宣言 排外主義の克服  足元から」12月3日)。そう、人々の不安を煽る手法のほうが問題なのだ。

SNSで「移民が押し寄せる」などの誤情報が拡散

 外国人に関してはこんな記事もあった。「外国人労災死傷者6000人超 24年全国 また最多を更新」(信濃毎日新聞12月1日)。これは氷山の一角であり、労災隠しが疑われ、外国人労働者の“使い捨て“がはびこっているのが現状だという声も載っていた。

 さて、外国人問題を語るなら、こっちではないだろうか。まず問われるべきは、彼らを安価な労働力として使い潰してきた側の責任ではないのか。

 自治体にクレームというキーワードでは「ホームタウン」騒動もあった。8月に国際協力機構(JICA)が国内4市をナイジェリアなど4カ国のホームタウンに認定した。ところがナイジェリア政府の「日本が特別なビザ(査証)を創設」との誤った声明をきっかけに、SNSで「移民が押し寄せる」などの誤情報が拡散。4市には不安や抗議の電話とメールが殺到し、ホームタウン事業は撤回された。しかしこの件は「誤情報には気をつけましょう」という問題だけだろうか? 次の社説はその根っこを指摘している。