なぜ山吹はかな子のもとへ向かったのか

──対照的な頼(伊藤万理華)とかな子(深川麻衣)という二人の女性は、山吹の内面を映す重要な存在です。

 頼は、山吹が唯一“素でいられる相手”です。彼女は山吹のことを“優しい人”として扱ってこない。その距離感が山吹には心地よかったんだと思います。

©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

 一方、かな子さんは“演じている山吹”を必要としてしまう存在です。彼女のもとへ向かうシーンは、脚本通りに演じながらも「なんで行くんだろう」と納得しきれない瞬間がありました。でも、かな子さんが母親から受け継いだ性質と、山吹が幼少期から身につけざるをえなかった振る舞いが、どこかで共鳴してしまったのではないか、と解釈することで、ようやく自分の中で折り合いがつきました。

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©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

──観たあとに自分の家族を思い浮かべる作品だと感じました。

「この映画を観て親に電話したくなった」と言ってくださった方がいました。まさに、そういう気持ちになれる作品だと思います。山吹の家族のように分かりやすく歪んだ場合もあれば、外から見たらごく普通に見えるケースもありますが、普段は見えなくても、どんな人にも家族や過去のできごとなど“背景”があるはずです。観終わった時に「自分以外の誰かの背景を想像してみよう」と思える人が少しでも増えるなら、この映画をやった意味はあると感じています。

 

杉山拓也=写真
菊池陽之介=スタイリング
堤紗也香=ヘアメイク

衣装協力:ジャケット・パンツ/イレニサ、その他スタイリスト私物

たかすぎ・まひろ 1996年、福岡県生まれ。09年俳優デビュー。映画『ぼんとリンちゃん』(14年)にて第36回ヨコハマ映画祭 最優秀新人賞を受賞。近年の出演作に、『映画劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』『盤上の向日葵』(いずれも25年)、大河ドラマ『光る君へ』(NHK)(24年)、ドラマ『ザ・ロイヤルファミリー 』(25年)などがある。

INTRODUCTION

『川のほとりに立つ者は』で2023年本屋大賞にノミネートされた寺地はるなの同名小説を映画化。監督は『愛に乱暴』(24年)の森ガキ侑大、脚本は『浅田家!』(20年)で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した菅野友恵。主演の高杉真宙をはじめ、幅広い世代の実力派俳優が確かな演技と存在感で支えている。原作者の故郷・佐賀でのロケ撮影も敢行し、キャストがその街に“生きている”かのようなリアリティを醸し出している。

 

STORY

弟を事故で亡くした羽猫山吹は、現実を受け入れられない母のために、弟になりすました手紙を書き続けてきた。母から逃れるように愛人をつくる父、荒唐無稽な発言を繰り返す祖父、骨董屋で“噓”を売る祖母。そんな家族に「噓と噓つきが嫌い」と反発していた姉・紅は、山吹が中学2年生の時に家を飛び出してしまう。山吹自身も専門学校進学を機に実家を離れ、就職し、幼なじみの頼と結婚。消息を絶っていた姉との再会も果たす。29歳の時、祖母の死をきっかけに久々に家族が顔を合わせるが、そこへ山吹の初恋の相手・かな子が現れて──。

 

STAFF & CAST

監督:森ガキ侑大/脚本:菅野友恵/原作:寺地はるな『架空の犬と嘘をつく猫』(中央公論新社刊)/出演:高杉真宙、伊藤万理華、深川麻衣、安田顕、余貴美子、柄本明/2025年/日本/125分/配給:ポニーキャニオン/©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

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